キズナ5

＊ ページ17

浮所side

「とりあえず、今日は俺ん家来い。お母さんには適当に理由付けて。な？」

俺はそう言いながら、那須の鞄を拾い上げ

自分の肩にかけた


「行こ。絶対守るから、離れんなよ。」

那須の手を引き、その場から歩き出した

静かな本屋で男子大学生が2人でこんなやりとりしてたら

それこそ目立つから

一旦店を出て、駅へ戻る方がいいと思った


那須は相変わらず顔色悪いし

足元も若干フラついてるし


たしかにこれじゃ、1人で帰るなんて無理だな



掴んだ手首に力を入れ直し

店の外へと向かった



どこで見てるか分かんない

そう思うだけで、俺ですら怖いと感じた


店を出た瞬間

「走るぞっ。」

俺は那須の手をしっかりと握り締め

駅へ向けて走った


タクシーに乗り込み、家に向けて出発


駅までの間、俺にはそれらしき人物は確認できなかった

那須が本屋に逃げた時点で、諦めたのか…？

いや、でもあんなことを言うような人が

そう簡単に諦めるかな…



隣に座って震える那須の手を握ったまま

これからどうするか

そればかりを考えていた




「ただいまー。」

母「お帰り、那須くんいらっしゃい。」

那「あ…お邪魔します…」

母さんの前ではなんとか笑顔を作ってそう言ってたけど

俺の部屋に着いた瞬間

那須はそのまま床に座り込んでしまった


夜飯は、俺の部屋で食べると伝え

那須の携帯で、俺が那須のお母さんに俺の家に泊まることを連絡した

2人きりにならないと

那須は何も言わないと思ったから


床に座り込んだ那須の体を支え、ベッド座らせる

隣に座って背中をさする


「大丈夫大丈夫、もう1人じゃないから。」

こんな弱々しい那須見るの初めてで

この1週間、仕事中に見せてたあのいつもの笑顔は

こいつが必死に作ったものだったんだと

やっぱり気付かなかった自分を責めた


那「…怖いっ…」

ポタポタと涙をこぼしながら、怖いと言い続ける那須

しばらくの間、俺はその震える背中を抱き寄せることしかできなかった



どれくらい経ったかな…

那須は泣き疲れたのと、張り詰めていた気持ちが少し緩んだのか

いつのまにか眠ってしまっていた

ゆっくりと体を倒し、布団をかける



さて…

どうするかな…


とりあえずうちに連れてきたけど

まだ何も解決にはなってない

明日もどこかで那須のことを狙ってるかもしれない


うかつに1人にはできないな…


メンバーに相談するか…いや、でもあんまり広げるのもよくないか…


大好きだ…ってことは、那須のファンだよな…

どうすれば、こいつの心を救ってやれるだろう…

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