後戻りができない ページ31
「最低です」
と吐き捨てたAは怒ったような失望したような何とも言えない顔をしていて
扉に向かう彼女の手を思わず夢中になって掴んだ
「離してください」
「離すわけないだろ。どうしたの。言わなきゃわからないから」
彼女の頬からきらりと何かが落ちて、Aが泣いていることに気づいた
下を向いている彼女の顔を両手で包んで上げさせる
唇を噛み締めて我慢しているようだが、もう一筋涙が伝った
「なにか気に障った？」
なじるように彼女の瞳が俺を見つめる
「欲求不満だからってカナミを襲ったんですか」
「は？」
なにやらあらぬ容疑をかけられた
「根拠は」
「さっき泣きそうなカナミとすれ違いました」
あぁ………
「あと、頬が赤くなってます」
「痴情の縺れをはじめとした男女関係の拗れを疑っていると」
こくりと頷くA
まさか、こんな疑いをかけられるとは
もし、Aが俺に疑いをかけるなら、カナミさんに無理な事情聴取をしたんじゃないかとか、そっちの方がありそうなもんだが
「彼女の弟について聞きたかったので、この部屋に来てもらいました。これは彼女の逆鱗に触れるようなことをぺろりと言ってしまったので、それで一発叩かれたものですね」
ぱちりとAが瞬いた
ポカンと口が開いている
「で？Aは何を怒ってるの」
カッと一瞬赤くなったと思えば、瞬時に青くなるA
くしゃりと自分の髪を鷲掴む
「私って、…………面倒臭ッ………」
愕然としたようにそう呟くと、泣きそうな目を今度は俺に向けた
ずいぶん今日のAは忙しい
「神谷さん、ごめんなさい。私、ひどい誤解をしました」
「あぁ、まあ。そうですね」
婦女暴行の容疑をかけられたからな
「私、焦って判断能力が鈍くなっていました。謝ってすむことじゃないかもしれませんが、本当に、すみません」
深々と頭を下げられる
というか、俺の質問は？
「カナミが泣くようなことを言ったんですよね？心配なので一度離れます。先程の件は後程、改めて謝罪をさせてください」
もう一度深く頭を下げてこの場から立ち去ろうとするA
カナミさんが大事なのも分かるが、それはそれでむかつくな
カナミさんも少し頭を冷やす時間が必要だろうし
「俺のことは置いていってしまうんですか…………」
出来るだけ気落ちした声を出す
ぴたりとAが固まった
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
