苦悩 ページ12
「ほら、買ってきましたよ。これでいいんでしょ？これでェ……」
パシリの水城さんが帰ってきた
A用のヘッドフォンと人数分の夕食
病院食は危険なので、あのときから手をつけてない
「Aさん、夕食です」
チラッと俺に目を向けると
「あれだけ手が使えるんだから、ご自分で食べられますよね」
背を向けるように寝返りを打つと、小声でぽつりと呟いた
耳が赤くなっているところを見ると、怒ってるんじゃなくて照れてるな
水城さんが来てからずっと、Aは狸寝入りを決め込んでいる
近づいて頭を撫でてみた
「A、夕飯。食べないの」
ぼふっと布団に潜り込んだ
ったく仕方ないひとだな……
「焼き肉」
ガバッ
「ふっ…………」
「ひど……騙したんですか？」
「本当に期待を裏切りませんね」
頬を真っ赤に染めながらもむくれる彼女
思わず愛しくなって頭を撫でた
白い壁にできた血の跡は、スタッフによって掃除された
滑って転んでできた傷なら、あんな高い位置には血が残らない
本当に彼女はお人好しだ
あんな目に遭っておいてまだ友人を庇う
事実を白日のもとに晒したところで、彼女は悲しむだけだから、
エゴで無理矢理吐かせた供述は 胸の内に隠蔽した
「え〰️……何……お前ら〰️。
ちょっと見ない内に雰囲気怪しくな〰️い？
さっきは名前呼びだったし……」
自分で食べろと言っておきながら、Aは放って置けないのだろう
「お箸はまだ難しいと思うので、まずはスプーンから……」
そう言いながら俺の手を握る
一生懸命、スプーンを持たせようと指を一本一本動かしていた
本当は普通に持てる程回復しているが、聞かれてないから言わないだけだ
彼女がやりたいんだから仕方ない
「よかった！上手に持ててますね！」
自分のことのように喜ぶ姿を見ると、グッと胸が詰まった
力なく座っている彼女の姿
後ろの壁には、彼女のもともとの背丈辺りから頭の後ろまで、一直線に血の跡が伸びていた
俺はまた、彼女を護れなかった
護ると誓っていたくせに無力な自分が許せない
さっきは心配がリミットを超えて彼女を叱ってしまったが、本当に叱ってやりたいのは他でもない自分自身だ
「あなたのお陰ですよ………」
空いた左手で彼女に触れた
暖かいな
ちゃんと生きてる
生きて、俺の傍で笑っている
「なにこれ、ちょっと妬けちゃうんだけどォ。
俺もマッチングアプリ登録しよ…………」
水城さんの独り言がこだました
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
