振り回される感情 ページ12
「これくらい…………いかがですか？」
ぱちん ぱちん
病室内に乾いた音が響く
名字Aは不思議な女性だ
本当に不思議で面倒だ
さっきの様子は儚げで随分可愛げがあったのに
開け放したカーテンの先にいた ひどく頼りない彼女を思い出す
頬に伝う涙にすら気がついていないようだった
蒼白で恐怖の縁にいる彼女は、掬い上げてやりたくなる程で
【ここまで来て、座ってください】
【もっと、俺の側に………】
言うままに動く彼女を誘導して、彼女の体を抱き寄せた
体が動けばいいのにと、思うのはもう、これで何度めか
抱き寄せた彼女の体は、その柔らかさに反してひどく冷たい
震えるその両肩をみれば、事件のことを思い出して恐怖に飲まれかけて居るんだろう
俺の体温を分けてやるから、早く戻ってきてほしい
痛々しい頭の包帯に触れながら思う
こんな俺を、助けるために、あなたには心も体も痛めさせた…………
謝罪の言葉は言えたとしても、まだ礼を言うことはできない
そのことに、また、心で謝って
【今度は必ず守るんで、これからは、俺を、頼ってください…………】
俺に向けられた彼女の瞳
涙に濡れたその瞳は、まるですがるかのようだった
俺の足に置かれたままの柔らかな手に 手を添える
【神谷さん…………】
俺を呼ぶ彼女の甘い声
それがひどく脳に響いて、誘われるかのように顔を、、
【爪、だいぶ伸びてますね】
【………………………………。】
いったい、どこでスイッチが入ったんだ
そういうタイミングはなかったはずだ
「適当な長さでお任せします」
仕事モードの名字Aに、半ば投げやりに返事を返した
、
、
「ご協力、ありがとうございます」
「こちらこそ、お手数おかけしました」
ようやく爪が切り揃えられて、俺の手は解放されるはずだが
なかなか名字Aは手を離さない
仕事か
素か
どっちだ
名字Aの様子を見ながら昨日からのパターンを思い返す
俺の右の人差し指にそっと手を這わす名字A
「神谷さん」
「なんでしょうか」
あの甘い声がまた呼んだ
柔らかい瞳に見つめられる
「触られてる感覚、ありますか？」
ああ、知ってたよ
仕事だな
一本一本指に手を触れながら、俺の指の状態について興味津々な名字A
感覚があるか確認したあとは動くかどうかに興味が移った
彼女は患者相手にだったら誰にでもあんな甘い声を出すのか
またよくわからない苛立ちが出てきた
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はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！ (2019年8月31日 9時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「大を占めるが」ではなく、「大部分を占めるが」です。 (2019年8月30日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「ベッドの上での再開」ではなく、「ベッドの上での再会」です。 (2019年8月30日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - ななみさん» ななみさん 応援コメントありがとうございます！うれしいです！更新続けられるようにがんばりますね(^^) (2019年8月28日 11時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
ななみ - はむさん！頑張ってください！ 応援しています！ (2019年8月27日 23時) (レス) id: 3f5cfa4750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年8月22日 23時
