二人の職業病患者 ページ6
「神谷さん、ご気分いかがですか？」
「別に、…………どうと言うこともありませんが」
「そしたら検温はお食事の後に、ちょっと落ち着いてからさせていただきますね？」
にこりと笑顔を向けられた
さっきと、ずいぶん感じが違う
今まではどこかビクついた様子で接してきていたクセに
人を安心させるような立ち振舞いでベッドの横にやって来た
「苦手な食べ物はありますか？」
「今回のメニューでは特にないですね」
その他 食べる順序だのなんだの、好みの話を淡々と聞き、暖かいおしぼりで顔を拭われる
なんでもないようなことではあるが、胸の中を得体の知れない苛立ちが駆け巡った
名字Aは職業病か？
さっき"付き合ってほしい"と俺は言った
まさか覚えていない訳じゃないだろ
「俺、さっき、言いましたよね。」
「すみません。何についてでしょう？」
未だに仕事モード貼り付けてる、目の前の彼女に目を向ける
顔を拭いている彼女の手元に包帯が巻かれた手を添えた
ズキリと傷が悲鳴を上げるがそこまで気にならないのが不思議だ
彼女が不思議そうに目を上げて、至近距離で目があった
「責任とって付き合えって、俺、言った筈ですけど」
「え？あ…………ぇえ！？」
かっと音でも聞こえるくらいに急に彼女の顔が赤く染まる
「そのあとすぐに寝てましたけど、しっかり把握した顔、しましたよね」
「あ、そ、捜査ですか？捜査に付き合わせたいってことですよね？」
「ハッそんなわけないでしょう…………知っててとぼけるのは良くないですよ」
真っ赤になって目線をさ迷わせる姿
さっきまでの仮面はあっけなく剥がれて
患者のひとりとしてではなく、ひとりの男としての扱いに戻り、俺は勝手に満足した
「あ、わ、わかりましたから…………その、話は食事の後にしてください。ご飯、冷めちゃいますよ」
持っていたおしぼりを慌てて置いて、ベッドサイドに座る名字A
真っ赤に染まった顔
涙で潤んで揺れている瞳
それに、心なしか体が小刻みに震えている
その姿を目にして心が震えた
あぁ
彼女は生きている
生きているなら守ることができる
何度振り払ったとしても 目の前に浮かぶあの光景
あんな思いはもうこりごりだ
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はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！ (2019年8月31日 9時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「大を占めるが」ではなく、「大部分を占めるが」です。 (2019年8月30日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 誤字がありました。「ベッドの上での再開」ではなく、「ベッドの上での再会」です。 (2019年8月30日 21時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - ななみさん» ななみさん 応援コメントありがとうございます！うれしいです！更新続けられるようにがんばりますね(^^) (2019年8月28日 11時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
ななみ - はむさん！頑張ってください！ 応援しています！ (2019年8月27日 23時) (レス) id: 3f5cfa4750 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年8月22日 23時
