狂犬の花嫁【今日から俺は】

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「うおぁぁぁぁあぁあ！！！」


「！！相良さん！？」




ガバッとベッドから飛び起きた


俺の目に写ったのは

もうお馴染みになった寝室と

零れるくらい目ぇカッ広げたA



「お、おおおおお恐ろしい…………なんだって…………なんだって あんな…………」


「…………大丈夫ですか？」


「あ、あぁ…………。まぁよ、俺の大事なメモリーが、なんつーか、その、汚されたんだよ…………」



も、もう…………なんなら吐きそうだ




「冷や汗が出てます…………」

そう言って、Aが俺の額をタオルで拭った



「ちょっと…………悪ぃ…………」



思わず、Aに寄りかかるように抱きつく



「悪ぃ…………これは俺のワガママだから…………。
　嫌だったら遠慮なく退けてくれ…………」



俺の目に飛び込んだ アイツの顔がサトシだったっつーおぞましい衝撃は治まったものの


俺の心は罪悪感の塊で押し潰されそうだった




アイツの夢を見たあとに Aにすがりつくなんざ、本当はアイツに不義理だとわかっちゃあいるんだがな…………


この痛みを



ひとりで耐えられる自信がねえ





思い返せば

アイツの 抱いてくれ っつー言葉は

隠れたSOSだったんじゃねえかって
アイツと会えなくなってから、しばらくは悩んだ


言われるがままにシちまったことは 間違ってたんじゃねえかと…………




その直後 親父の左遷で引っ越して

バイトしながら定時制に通う傍ら
まるで懺悔でもするかのように虐待やネグレクト、愛着不全と
アイツの助けになったであろう本を 片っ端から読み漁った


でも、当時の俺には家も名前も知らねえ女を見つけ出せるほどの力はなくて

俺は


あえて アイツを思い出さないようにした





アイツは結構かわいらしいタイプの女だった

遊ぶんならキレイめな女を選んだ



女に本気になれずに取っ替え引っ替えして、いつしか本当に思い出さなくなってたな…………



お前ぇが言ってた「違う」っつーのも あながち間違いじゃあねえな


俺はあのときとはもう違う


きったねえ大人に成り下がっちまった







ふわっと


柔らかい熱が俺の背中を包み込んだ




それがAの手だと

Aが俺の背に手を回してくれたんだと気づいて


ぐっと胸が詰まる







おずおずと動いた小さな手が

ゆっくり


撫でるように


背中を擦った








全く関係ねえのにな


まるで アイツが許してくれてるような




変な錯覚に囚われた

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