山眠る ページ5
*
＿＿＿＿「山眠る」
曰く、落葉してしまった山々が、冬の日差しのなかで眠ったように静まり返っている事。今視界に映る「それ」もまるで玩具みたいに静寂に包まれていた。＿＿否、玩具とは少し違う。「それ」にはちゃんと話すための器官が整っている。ただ、「それ」が閉口し、身体も動いていないだけだ。
私が何を思い、何を聞き、葛藤に飲み込まれそうになっても「それ」が口を開くことはなかった。心が罪悪感に押しつぶされそうで、今にも折れる小枝のようにか細くなってもだ。
「＿＿ねぇ、私も好きだったよ。ずっと」
最期の時のように指を絡める。上等な毛布に包まれたような安心感は既に無くなっていて、ただ無機質でひんやりとした冷たい質感に、手が……体全体が硬直した。
一度感じてしまった物はもう消すことができない…そう考えたのか手を何度か開閉すると虚ろな表情へと変わっていく。
そして、乾いた笑いと共に、常時服用している睡眠薬の瓶を開けた。
「……春なんて、もう来なくていいの」
大きく口を開け、水と薬を勢いのまま流し込む。飲み込むと同時に彼女は床へとへたりこみ、咳を繰り返した。
(＿＿春告鳥、春告鳥と願い続けた自分への報いだ。本当に春告鳥は来てしまった。)
息を荒げ、苦しそうに顔を歪めそうになるが、彼女は最期の力で笑ってみせる。声を出すことは叶わず、口をぱくぱくと動かすと、空気が抜けたように倒れた。
(先に逝かせてごめんなさいね、私もすぐに行くから＿＿＿)
*
木に止まり、一部始終を見ていた者がいた。
それは、面白いものが見れたとでも言わんばかりに一回だけ鳴く。揶揄するかのような視線を向けた後、空へ行ってしまう。
が、大空からキラキラと光るものが風に乗って運ばれてくる。その��新緑がかった羽毛�瓩蓮�遺体となった彼女の手に止まった。
＿＿＿＿彼と、繋いでいた手に。
_fin_
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Carol(プロフ) - 美城さん» コメントありがとうございます…！そう言って頂けるのは嬉しい限りです( ´ ▽ ` ) (2017年4月14日 18時) (
レス) id: 55063acd93 (このIDを非表示/違反報告)
美城(プロフ) - 素敵です！こういった小説は珍しいのでとても読んでいて楽しかったです…!これからも頑張ってください！ (2017年4月13日 7時) (レス) id: 17c09abe6c (このIDを非表示/違反報告)
Carol(プロフ) - 南野ユウカさん» コメントありがとうございます！単なるハッピーエンドで終わらせたくない病患者なので、そう言って貰えるととても嬉しいです。はい、頑張ります(´▽`) (2017年4月4日 17時) (レス) id: 55063acd93 (このIDを非表示/違反報告)
南野ユウカ(プロフ) - 短めで読みやすかったし、とても面白かった...と言うか、こういう切なめな感じがボクは好きです！これからも他の作品とか、頑張ってください！ (2017年4月4日 15時) (レス) id: 16e2777840 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Carol | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/m1771191452/
作成日時：2017年1月17日 23時
