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13 本心 ページ13

初めて着る服と髪形と靴になかなか落ち着かない。しかし、ヴェリタはこの服を褒めてくれた。「綺麗だ」と。私にはその言葉が何よりもうれしかった。

 触れるのは二回目のヴェリタの手は、少し骨ばった男らしい手で、前よりも少し温かく感じた。

 百人以上いそうなこのホールで、私とヴェリタだけ切り取られたような、二人きりの空間に感じられる。幸せな感覚。この感覚はいつまで続くのだろう、と考えると自然と心が冷めてしまった。


『どれが本物でどれが偽物か』
 音楽の中でそんな歌詞が聞こえたとき、ヴェリタの足が止まった。ふと顔を上げてヴェリタの顔を見上げると、前髪で少し見えなかったが目の中に冷たい色が見えた。

 今まで気丈にふるまっていたが、ヴェリタだって人間だ。怖いと思うことだってあるし悲しい事だってある。私は、彼の気丈さに甘えてしまっていた。それが知らず知らずのうちにヴェリタに負担をかけていたのかもしれない。

 何が幻覚で何が本物か、わからなくなっているのかもしれない。そして、分からなくなっている自分を嫌い、自己嫌悪の渦に巻き込まれているかもしれない。ヴェリタのことだから、きっとそのことも誰にも言えなくなっているんだろう。

「ヴェリタ……」
 ヴェリタの、私の初恋の相手の名前を呼ぶ。ヴェリタは私の目を見なかったけれど、名前を呼ばれたときに体が少しだけ震えたのが分かった。

 そっと両手をヴェリタの背中に回す。
――私はここにいる。今この瞬間だけは、絶対に幻覚なんかじゃない。
そう伝えるように腕の力を少しだけ強めた。

その私の心の言葉に返事をするように、ヴェリタは私を抱きしめた。何度も求めたかったぬくもりが、私を包む。

 幸せなのに切ない。

 背中に冷たい何かが幾筋か流れた。ヴェリタの涙だ。初めて見せてくれた本心に、私は嬉しくなるとともに悲しくなった。


――もしも死ぬときは、ヴェリタの幻覚を追いかけたい。

 私は心の奥で、そうひそかに強く願った。

……

 結局、私達はあのまま日付が変わるまで踊っていた。

オルディナからの電話で「急いで帰ってきてくれ」と言われ、帰った。きっとその電話がなければ明るくなるまで踊りあかしていたかもしれない。

 自室で髪をほどき、ドレスからいつものスーツに着替えていつもの服装に変える。昨日のあの時間が、まるで夢だったように感じる。

――魔法が解ける瞬間のシンデレラもこんな気持ちだったのかしら……

14 準備→←12 親戚


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作品ジャンル:ミステリー, オリジナル作品
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エメラルド(プロフ) - 心の雨と虹の空さん» ありがとうございます!そう言っていただけてとても嬉しいです。これからも頑張ります! (2018年1月18日 16時) (レス) id: ab0197407b (このIDを非表示/違反報告)
心の雨と虹の空(プロフ) - 参加してくださりありがとうございます。すごく面白いですね! 細かい動作や表情が丁寧に書かれていて、素晴らしい作品ですね。アドバイスがないくらい面白かったです。活動頑張ってください。あなたの作品、大好きですw (2018年1月18日 11時) (レス) id: 469d2368ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:いさみ x他1人 | 作成日時:2018年1月9日 10時

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