24話 ページ34
二日目、昨日とはまた別の空気が戦場を覆っていた。私は最前線に立ち風を感じていた。乾いた血の匂いが鼻腔をくすぐる。敵の血か仲間の血か、区別のつかないそれは戦場をより重い空気にさせた。
「在瑠、そろそろだぞ」
「楚顕、今日は、昨日よりも激しくなる。」
私は、振り返って楚顕を見た。
「だろうな、あんなんを抜かなきゃならねぇんだ。そりゃあそうだろ。…なんだ、怖じ気付いたのか?この戦は、お前にかかってるんだろ。しゃんとしてろ。」
楚顕は在瑠の目をしっかりと見て、言った。
「そうだな…楚顕、死ぬなよ」
そう言って私は楚顕を残し先に持ち場へ帰った。残された楚顕は一人昨日の事を思い返す。
昨日の晩、在瑠は帰って来ると俺達に作戦があると言って
今日の作戦を話し始めた。まず、中央の騎馬隊は俺達が横陣を突破しない限り出てこないこと。そして、左右の戦場からの援軍は難しいこと。つまり、俺達が自分たちだけでなんとかするしかないということ。そこで、在瑠の言った作戦は、横陣の一点突破を図ることだった。
「一点突破…」
譚が難しそうな顔をして呟いた。
「そんなのただの一つの伍だけでできるのか?」
故廊も難しいと考えているのだろう、納得がいかないというようだった。
「違う、一つの伍でやるんじゃない。この作戦をやるのは、日が真上に登ったとき、他の伍も巻き込んでやる。」
「でも、そんなこと…何処も僕らの言うことなんて聞いてくれるとこなんてないよ」
鋭は、こんな事言いたくないけどと続けて言った。
「だから、朝イチじゃなくて昼にするんだ。」
在瑠以外の頭の上には疑問符が浮かぶ。
「正確には、昼にする理由は2つ在る。一つは、横陣の中で一番脆いところを探すため。もう一つは、他の伍に一緒に戦ってもらうため。こんな言い方は良くないかもしれないけど、昼になれば、多くの伍で死者が出る。伍によっては、伍長が死んで統率が取れなくなるところもあるだろう。そこを狙う。そういう班をかき集めて、人数を増やして、一点突破の攻撃に転じる。この作戦は、味方の犠牲で成り立つ。」
在瑠が作戦の全容を語ると、辺はしんと静まり返った。
「人数が集まったらどうするんだ」
ここで俺は初めて口を開いた。作戦は理にかなっているが、仲間が死ぬのが前提というのが気に入らなかった。
「ある程度集めたら、敵の弱点を錐型で突破する」
そういった在瑠の目には俺の知らない何かがあった。
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rei - あっという間に読み終えてしまうほど面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。在瑠さんの成長した姿や桓騎将軍との出会いなど、とても楽しみにしています。 (2月6日 21時) (レス) @page34 id: 67473be8fa (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Alphecca | 作成日時:2023年3月16日 18時