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21話 ページ31

少し走るだけで、もう誰の気配も感じなくなった

森の中の暗闇と月明かりが、私の”独り”を際立たせる

今思えば、こんなにも暗く静かな夜は久々だ

昔は、これが普通だったのに…

王騎軍に毒されたのだろうか

冷たい風の匂いが鼻腔をくぐる

それとともに

ここには、どうも似つかわしくない匂いが漂って来た

「血の匂い…」

さっと周囲を警戒するが、生き物の気配は感じられない

私は剣を構え、血の匂いが強くなる方へ進む



ピチャ

私は驚いて反射的に足を引っ込める

血か…

次はゆっくりと足を進めると、死体に触れた

ゆっくりとしゃがんでその正体を確かめる

「…趙兵か」

なぜここに趙兵が?なぜ死んでいる?

私が趙兵を睨めつけながら思案にふけっていると

刹那

背後から全身に鳥肌が立つほどの殺気を感じた

避ける時間はない、ならば…

ガキーン

私は流しきれずにふっ飛ばされた

クハッ

木に激突した背中が痛い、攻撃を受け止めた腕はビリビリと痺れている

次の攻撃を受け止めるのは無理だ、勝てない

でも、負けるわけにはいかない

私は、全ての力を足に込めて剣をまっすぐに構え、1本の矢のように飛び出した

油断してろ
喉を一突きしてやる

そう思ったとき私は初めて敵の姿を捉えた

ギョッとして咄嗟に身を捩り軌道をずらしたせいで、体中に激痛が走った

どう着地したのかは私にもわからないが、気付いたときには地面に倒れ込んでいた

そして、問題の敵を睨みつける

「いい加減にしてよ、騰!」

「すまないな、少しおどかしてやろうと」

騰は全く悪びれもなく告げた

騰のそんな様子にイラッとしたが、いつもこの調子なので諦めることにした

「それはそうと、あの趙兵を殺ったのは…騰?」

「ああ、廉頗の刺客だ」

「刺客?」

「廉頗は、戦の前に敵将を討つために刺客を放つ。廉頗がいつも使う方法だ」

「被害は?」

「ない。来ると知っていればいくらでも対策を打てるからな。…ところで、こんなとこで何をしている?」

「そうだッ、左右の戦局を聞きに行こうと思ってたんだった!」

完全に忘れていたが、私は情報を集めに来たのだ

急いで本陣に着かないといけないのに、こんなところで油を売っていられない!

でも、ここで騰に出会えたのはラッキーなのでは?

そこで私は思いきっち聞いてみた

「騰は、全体の戦況を把握してる?」

「ああ、知っているが…本陣まで来てくれ。その方が多くを知れるだろう」

それに頷いて私は騰の馬に飛び乗った

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rei - あっという間に読み終えてしまうほど面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。在瑠さんの成長した姿や桓騎将軍との出会いなど、とても楽しみにしています。 (2月6日 21時) (レス) @page34 id: 67473be8fa (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:Alphecca | 作成日時:2023年3月16日 18時

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