11話 ページ19
「俺は楚から来た…人質として。ある意味ではお前の敵だ。」
「……」
初対面なのにこれでもかと威嚇されてしまい、何も言えなくなる。蒙武とは違って気難しいタイプなのかもしれないと思った。
もとはといえば私が威嚇されたのは蒙武のせいだ。
遡ること数分前…
「楚子!お前に会わせたいやつが居るんだ」
蒙武は私の背を押して前に押し出す
「在瑠です…よろしく」
「あぁ、楚子だ」
私が差し出した手を軽く握り楚子は言った。
・・・
お互いにそれ以上に話すことがなく、気まずい空気が流れる
在瑠は、初対面だというのに顔の表情を一切変えない楚子に戸惑っていた。
これは本格的にまずいのでは?と思い、蒙武に目配せをする
すると蒙武は満足そうに笑って爆弾を投下した。
「楚子、在瑠は王騎将軍の娘なんだってよ。楚ともよく戦ってるから知ってるだろう」
ピシッと空気が凍りついた。蒙武はそんな空気をもろともせずに私達に笑いかけている。
私は蒙武を睨みつけてから楚子に話しかける。
「ええっと、楚子は楚国から来たの?」
そして返ってきたのが冒頭の言葉だ。
楚子が秦に敵対心を持っていることはわかった。が、私は仲良くしたいと思っている。心の底から。
私の父が王騎将軍ということがどうしても足を引っ張っている
一旦私は頭を冷やして考えてみた。
もはや完全に秦に染まってしまっていて忘れていたが、いや、むしろ趙に少なからず恨みを持っていたからか。
私は趙国の人間だった。
楚子と同じ、もともと秦の人間ではない。
ならば何かわかり合えることがあるのではないだろうか。
「楚子…私ももともとは秦の人間ではないんだ」
「だが、王一族の者なんだろう?」
いかぶしげに私に尋ねた楚子の言葉にコクンと頷く。
「私は、養子なんだ。だから王一族の血なんて引いてないし、秦人でもない。」
「私は親に捨てられたんだ。本当の親に…」
楚子は人質として来たと言っていた。ならば、親に捨てられる。あるいは大切にされなかった者同士気持ちが分かるはずだ。
「私はもともと趙人で、戦争のときに里が焼けた。そこで、通りかかった王騎将軍に拾われた。」
「秦を恨んではいなかったのか?」
「うん…私の里を襲ったのは趙の敗残兵だったし、秦に助けてもらったようなものだったから」
「楚子は秦を恨んでる?」
「いや、俺は…」
楚子が辛そうに、寂しそうに言葉を紡ごうとした
その時馬の蹄の音が迫ってきた。咄嗟に私は蒙武を盾にした
93人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
rei - あっという間に読み終えてしまうほど面白かったです。素敵な作品をありがとうございました。在瑠さんの成長した姿や桓騎将軍との出会いなど、とても楽しみにしています。 (2月6日 21時) (レス) @page34 id: 67473be8fa (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Alphecca | 作成日時:2023年3月16日 18時