僕的生き方

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『…じゃあ、俺が大人になってやっぱりアイドルは辞めると決めたら、誰が俺のファンを幸せにして、誰が数年先まで決まっている仕事をしてくれるんだって、出てきちゃった。』



選べる自由なんて中途半端な優しさなんて与えずに、お前にはここしかないと追い詰めて欲しい。

ここしかないと追い詰めて、たまに出てきては逃げ道がないか様子を伺う弱い自分を、殺して欲しかった。

じゃないと、いつか頑張れなくなりそうで、俺。



「なるほどね、ところでそれって喧嘩？」

『…ただの俺のわがままかな。』

「Aはいい子過ぎるよ。
たまにのスパイスは必要、美味しくなくなっちゃう。」



そう言ってジャニーさんは湯気のたったうどんに七味をパラパラと落とした。

自分から定食屋に入ったはずなのに、うどんが食べたかったなんて言うジャニーさんもジャニーさんだし、咄嗟にうどんを出せる定食屋も定食屋だ。



『…高校行ったほうがいい？』

「Aが決めることだよ。」

『もう分かんないよ…。』

「まあ、喧嘩は勝たなきゃ面白くないよね。」

『勝つ？』

「簡単さ、お母様を納得させればいいんだよ。
高校なんて行ってられないくらい仕事がやりたくて仕方ないって分からせるんだよ。」

『…え、どうやって。』

「どうやってもなにもないよ。
仕事が心から楽しくて、もっともっと色んなことにチャレンジしたくて、自分のためにデビューしたくて仕方ないって思えば、そういうのは自然と外に溢れてくるものだよ。」

『………っ。』

「…Aは、自分のためにこの仕事してる？
自分のためにデビューしたい？
デビューすることが、ちゃんと自分の夢かい？」

『………。』

「お母様は気づいてるよ、きっとね。
お母様のために、ファンのために頑張ることは素晴らしい。
だけど自分の息子が、誰かのために生きる道を決めているとしたら？
親だったら応援できるわけがないでしょ、自分のために生きて欲しいのさ。
そりゃあ"保険"はかけるし"逃げ道"だっていくらでも作っておいてあげたくなるよ。」

『…デビュー、したいよ。
ほんとだよ、そのために頑張ってるし、だから！』

「僕は、僕からはAの手は離さないから安心してね。
僕はAの決めた道を尊重するよ、いつだってね。」

『………。』

「さ、うどんが伸びちゃったら最悪だよ！
Aもはやく温かいうちに頂きなさい。」

『いただきます…。』



味噌汁に伸ばした指先が、少しだけ震えていた。



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