・ ページ14
・
それは完全に自分の失態だった。
レッスン後にトイレに行きたくなった俺は、スタジオに荷物をおいたままトイレに行った。
戻ってきてバッグを持つと、思わぬ軽さに右手が驚いた。
中身が空だった。
ひそひそくすくすと背後から聞こえた声は、悲しいことに聞き慣れていた。
レッスンの雰囲気を見ていて分かったが、辰哉くんと亮平くんは当時から誰にでも優しく明るく、人気者だった。
俺がその2人から肯定的な声を掛けられていることが、余計に"気に食わなさ"を助長させてしまったのだ。
そのことに気づきながらも、この空間に荷物だけを置いていった自分が悪かったのだ。
(どうしよ…。)
練習着は近所のフリーマーケットで見つけ、ダンスシューズは母親が貯金を崩して買ってくれたものだ。
当時は仕事をしてお金を貰えるようになっていたが、といっても新しい物を簡単に買うことなんて出来なかった。
…母親が元父親に背負わされた借金返済に追われていることも、小学校に上がればなんとなく察しが付いていたからだ。
深「あ、カズヨシ。」
『…っ！』
深「どこ行ってたの？」
『…トイレに。』
深「そっか。
あ、ねえ、このあとのこって練習しようって阿部ちゃんと話してたんだけどよかったらダンス教えてくんね？」
阿「そう、水上くんダンスうまいからよかったら。」
『…ごめんなさい、このあとは。』
阿「あー、いそがしいのにごめんね。」
深「そっか、残念だけどまたこんどな。」
『お、おつかれさまです。』
わざとぶつかられたり悪口を言われるのにはすっかり慣れていたが、物を隠されるのはそのときが初めてだった。
子どもだった俺は、大事にして大人にバレでもしたら、仕事に影響するかもしれないと考え、誰にも言わず1人で見つけることにした。
といってもここは広い施設だ。
片っ端から1人で探すのは不可能に近かった。
勢いのまま廊下に飛び出したはいいものの、探す場所の見当もつかず立ち尽くした。
(…このあともしごとなのに、早くみつけなきゃ。)
「おい！」
『っ！』
突然背後からかけられた声は、俺をくすくす笑っていた取り巻きの1人のものだった。
・
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 801人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SnowMan」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
MIo(プロフ) - togawadollさん» ご不快な思いをさせてしまいまして、申し訳ございませんでした。以後ないように気をつけます。修正致しました。ご指摘ありがとうございました。 (2021年3月9日 12時) (
レス) id: 5ac68e315d (このIDを非表示/違反報告)
togawadoll(プロフ) - 視点ごとにセリフの「」前に名前が無いと全て夢主君が喋ってるのかと思ってしまいます・・・。夢主君以外は名前ありの方がまだ読みやすいです・・・。それか全て外した方がまだいいと思いました。 (2021年3月9日 1時) (レス) id: a83c0082d0 (このIDを非表示/違反報告)
MIo(プロフ) - 林檎さん» コメントありがとうございます！可愛いと思って頂けて本望です！笑焦らしに焦らしまくる展開で申し訳ないですが、これからもよろしくお願い致します！お優しいお言葉もありがとうございます(^^) (2021年2月21日 16時) (レス) id: 5ac68e315d (このIDを非表示/違反報告)
林檎 - いつもみな、可愛い！と思って読んでます！これから、メンバーとみながどう距離をつめていくのか楽しみです！無理しない範囲で頑張ってください！ (2021年2月16日 14時) (レス) id: a733c91119 (このIDを非表示/違反報告)
MIo(プロフ) - 林檎さん» 初めまして。コメントありがとうございます。出会ってくださってこちらこそ感謝です！これからもよろしくお願い致します！！ (2020年12月15日 18時) (レス) id: 5ac68e315d (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：MIo | 作者ホームページ：https://mobile.twitter.com/____mio__w
作成日時：2020年12月13日 22時
