憑神様 (ページ9)

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憑神side

そろそろ、この仕事を辞めたいと思っていた。

何も悪いことをしてないのに、おばけが出ると怖がられつづけて、終いには誰もすまなくなった。アパートだけが、段々と古くなっていく。

このアパートと共に、俺は朽ちていくのかと、それでもいいと思うようになっていった。

外の音だけが響く一人の部屋で、時たま来る不動産屋のおじさんと話すのが、いつからか楽しみになっていた。

それでもいつ人が来ていいようにと、掃除は続けていたし、定期的に模様替えもしたりして、(俺がやりたいようにやっていただけ)ついにこの日を迎えたのである。

正直、今回も同じかなって思っていた。

過去に住んだ人と同じように俺の姿は見えなくて、おばけが出るって怖がられて、またスグに出ていくのだと思っていた。

でも、今回は違った。

初めてあった時から、俺の姿が見えていたことにただただ驚いた。

見える人もいるんだと嬉しくなった。

ただ朽ちていくだけの人生を不憫に思った誰かが、俺と彼女を合わせてくれたとしたら、それはとても嬉しいことだった。

彼女との出会いは、俺のこれからを変えてくれそうだ。毎日が楽しみになった。

ただ、目の前に座る彼女の目の奥が見えない。

世界を閉ざすように、光が、見えない。