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次の日。
出会いは、唐突だった。
少しの荷物を持って、海岸沿いの堤防の横を歩き家に向かった。
あぁ、今日からはあの家か。
いつも重たい私の足取りを、軽くするだけの理由がある。
キャリーケースを二階にあげて、鍵を開ける。
あの、外の階段だけどうにかならないかな。
ギシギシいってちょっと怖い。
ドアを開けたら、綺麗でオシャレな部屋が広がってるもんだから、それもどうでも良くなった。
キャリーを持って、リビングに向かう。
リビングのドアを開けたところで私は固まった。先客がいたのだ。
リビングのソファーの所に知らない男の人が座っている。ああ、出るってこういう事なんだ。
ソファーに座っていた先客が、私の気配に気がついたのか上半身をひねる。
黒髪が揺れる。
｢ああ、おかえり。｣
きゅっと目が細められて笑顔を受け止めきる自信がなくて、私は見れずに俯いた。
A｢人違いじゃないですか？｣
私はここから出ようと、急いで玄関に向かう。
先客がいるなんて、聞いていない。
しかも、私の家になったはずなのに。
さては、まだ、書類上の話だったのか。
｢ああ、待って！｣
リビングから逃げ出る私の背中を、声が追いかける。
A｢いや、ほんとに人違いだと思います。｣
｢違くない！違くない！昨日、この家を見に来てくれた子でしょ！｣
A｢そうですけど、違うと思います！｣
玄関まで行こうとする私、追いかけてくる男性。
どっちが早く着くか。
｢ねぇ！不動産屋さんに出るって言われなかった？｣
昨日の大家さんの言葉を思い出す。
出るって言っていた。なにかは分からないけど。
この家に住む人は決まってそう言うと。
A｢言われましたけど。｣
｢それ、俺のこと！｣
あまりにも一生懸命に言うものだから、私の足は玄関の少し手前で止まらざるを得なかった。
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作者名：くろとま | 作成日時：2020年6月25日 22時
