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｢ついたよ。｣
ここに至るまでの経緯を思い出しながら、傘を差してついて行った大家さんの背中が、いつの間にか止まっていた。
外見は、築年数が結構たっているように見えるアパートが建っていた。
若干軋む階段を上って、2階の部屋へ。
｢ここが、さっき言った物件だ。どうぞ開けてみて。｣
A｢失礼します。｣
ドアを開けると、真新しいフローリングが目に入ってきた。
別の部屋と思うほど、中はとても今っぽい。
というか、外見と中が全くあっていない。
真逆だ。
A｢綺麗ですね。｣
｢でしょ。さあさあ中も見てみてよ。｣
靴を脱いで、真新しいフローリングの上を歩く。
A｢広い。｣
外見からは判断出来なかった広さ。
部屋が2つにキッチンとお風呂、トイレ。
収納もしっかりしてるし沢山ある。何より驚いたのが、
A｢ここ、誰か住んでいるんですか？｣
｢いや、誰も。この家具や家電も付いてくるの。｣
誰か住んでいるんじゃないかってくらいの、家具家電の揃いよう。
家具の配置や一つ一つがとてもオシャレだった。
A｢確認なんですけど、それで月この値段ですか？｣
｢そうだよ。｣
A｢会社潰れたり、しませんか？｣
｢全然大丈夫。面白いこという子だね。｣
A｢心配になりますよ。この部屋ですよ？｣
オシャレな、マンションの一室を思い浮かべてほしい。
マンションのモデルルームの家具が置いてある、あの感じ。
それが目の前に広がっているんだから、驚くしかないであろう。
しかもそれが、タダ同然で手に入る。
こんな所にその値段で住まわせてもらえるなんて。
こんな物件逃すわけなくて、
A｢ここに決めます。｣
と、大家さんにいう。
｢そうかい。じゃあ、決まりだ。この部屋は君のものだよ。｣
さっきの不動産屋に帰って、書類を書くことになった。
驚いたのは、今日からもう住んでもいいとのこと。
でも、それはあれなので荷物をまとめて明日から住まわせてもらうことにした。
どうせホテル暮らしの少しの荷物しか持ってきていないんだ。
不動産屋から、ホテルまでの帰路につく。
ふと空を見上げると、いつの間にか雨はやみ、曇天の隙間からオレンジ色に染められた空が見えていた。
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作者名：くろとま | 作成日時：2020年6月25日 22時
