憑神様 (ページ15)

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ツキガミsaid

夕日に染められた海沿いを二人の影が並ぶ。
近くのスーパーから、夕飯の買い出しの帰り。家の近くの海岸線沿いを歩く。

カサカサとビニール袋が擦れる音も、サンダルのぺたぺた音も、波が押し寄せる音も、いつの間にか生活の一部になっていた。

夏はすぐそこまで、気づいていないだけでもう来てるのかもしれなくて、淡くて少し紺が混じってきた空に、立派な入道雲が立ち上っていた。

「完璧だ…」

隣で歩いていた彼女は立ち止まってそう言った。

もう何百回と何千回とこの景色を見ている俺にとっては、なんてことないように思ってしまうが、彼女が足を止めたので自分も進むことをやめた。

首は雲の上を覗こうとして、うんと反り返っているし、顔は夕日が照らしてオレンジ色になっていた。いつからか、携帯を取り出してその雲を収めて満足そうにうん、と頷いた。

完璧すぎる夏を、画面いっぱいに収めたかったらしい。

自分にはない感性を持つ彼女が羨ましくて、もっと知りたくなった。どんな景色が好きで、何を考えて、その瞳は何を写しているのか。

なのに君は、何一つ教えてくれない。

君は何者で、過去に何があったのか。なぜこの街に来たのか。時たま見せる暗い顔の理由も、これからのビジョンも、

全てが見えない。