憑神様 (ページ14)

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慣れないことをしたからなのか、美味しいご飯をもらったからなのか、程よい暖かさが包んでいるからなのか、彼がそこにいるからなのか。

何が引き金か分からないけど、蓋をしていたはずの眠気を呼び戻してきた。

ソファーで座った体勢で、ぽすんと左側に倒れれば艶のあるレザーの生地が頬に当たった。

眠たい、がだんだんと頭の中を支配してきて、窓から指す光が、開けてる窓から入ってくる音が、彼の気配が、全てぼやけて溶けていく。

チクチクと一定のリズムを刻む秒針の音が、夢の中へ誘っていった。

呼ばれたような気がして、目を開ける。

眩しさになれない目が、抗って閉じようとしている。背もたれの部分に頬をついた彼と目が合った。寝顔を見られていたとしたら、恥ずかしい。

「幸せそうな顔して寝てたよ。」

久しぶりに気持ちよく寝れた感じがした。夢を見るわけでもなく、寝付けないわけでもなく、すっと意識が溶けていく感じ。

「久しぶりに、気持ちよく寝れました。」

「散歩したからかな。」

ローテーブルに、散歩の記憶が残っていた。

丸っこい、透明がかった緑のシーグラスを手に取る。二つばかり手に取ってもて遊べば、ザリザリとした感触が手に伝わる。

「また拾いに行こうね、それ。」

「ぜひ、」

日差しが入り始めた部屋の中、
チクチクと秒針の音、
彼の眼差し

いまはこれだけでいい。