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キッチンに立ちながらチラリ

夕飯を取りながらチラリ

洗い物をしながらチラリ

何度も彼女に目がいく。
昨日まで一人だったこの部屋に、ついに住人が来たのだ。それも、俺のことをちゃんと見つけてくれる、人間が来たのだ。

この家に自分以外の人がいるなんて、いつぶりだろうか。彼女よりも、自分の方が今の状況を楽しんでる気がする。まぁ、それもいいか。

彼女が寝室に消えてしまったので、部屋の電気を消して静かにする。

リビングのテレビ前のソファーの上。窓の外が見えるここが、俺の定位置。部屋の明かりを消した途端、窓の形に蒼白い光が入ってきた。

月が登っていたようだ。彼女は月に気がつけたかな。綺麗なものは、誰かと共有したくなる。

日が変わって、何時間かたった頃。空の遠くが白み始めて、それでも朝はまだ遠い。

静かに寝室のドアが空いた。殺された足音は、ソファーの横で止まる。ソファーの上の俺を見つけたのか、彼女がぴたりと止まったのが分かった。

顔の位置は変えず、目だけ開く。頭はテレビの方向に向いているので、彼女には起きていることは分からない。

お互いに息を殺す。

無音のリビング。窓の外は、淡く色づく。

そのうちに、息が漏れる音がした。

「笑った。」

俺の嬉しそうな声が、まだ暗い部屋に響く。彼女は気のせいですよと、誤魔化した。

本当は、どうなんだろう。

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作者名:くろとま | 作成日時:2020年6月25日 22時

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