憑神様 (ページ11)

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夕飯は、ツキガミさんが作ってくれた。

昔から人が料理を作るところを見るのが好きなので、ソファーの上でボーッとしているフリをしながらキッチンに立つ彼を眺めていた。見てみれば、食材にも鍋にも食器にも家具にも触れることが出来ている。

人にだけ触れられないと言った時の悲しそうな顔を、一人ソファーの上で思い出した。

ご飯を食べて、お風呂に入れば彼が先程の食器を洗ってくれていた。なんにもしてない自分に、心がチクリとした。すみませんと言えば、いいんだよと眩しいくらいの笑顔で返ってくるから、ちょっと自分のことが嫌いになった。

私に出来ることは何？今は全く考えることが出来ない。

お風呂で体を温めれば、さすがに疲れからか眠気が襲ってくる。寝室へ入れば、一人には広いベッドに沈んだ。大きなベッドに包み込まれるのも悪くないなと思った。その後は、あまり記憶にない。

次に目が覚めた時、窓の外が白み始めていた。

まだ遠くに朝はいて、ぼんやりとした頭で空の色が綺麗だと思った。

すぐ下の海も同じ色をしている。ベッドの上で少し伸びて、窓からしばらく景色を眺め続けた。窓を少し開ければ、潮の匂いの風がレースのカーテンをふわりと揺らす。

目が覚めてしまって寝れなくなったので、そっと寝室を抜け出す。足音を殺してリビングに向かえば、ソファーに横になる彼を見つけた。家に自分以外の人がいることが随分無かったので、安心して無意識に笑っていたようだ。

「あ、笑った。」

彼の嬉しそうな声が、まだ暗い部屋に響く。気のせいですよと、誤魔化した。

本当は、嬉しかった。