保健室のシンデレラ【国見英】

Cinderella20 ページ21

A「せっかくだから写真撮る！」


国見「女子って写真撮るの好きだよな」


A「お兄ちゃんもよくやってるよ？」


国見「あー、やってそう」





Aは食べ物の写真を撮ると
いくらか店内の写真も撮っていた





国見「写真好きなの？」


A「楽しい時とか、嬉しい時とか。ちょっとしたことでも、残したいなって思った時は撮るよ」


国見「へぇ」





ひとしきり撮り終えると
やっとAも口を付け始める





A「わぁ、すっごい美味しい！」


国見「それは良かった」


A「シフォンケーキも美味しい〜！」


国見「語彙力…」


A「だって美味しいものは美味しいんだもん」





嬉しそうに次へ次へと口にするAは
今までで一番幸せそうに見えた





カシャッ





国見「っ、なに」


A「英も幸せそうな顔してる」


国見「ん…なわけないだろ」


A「してたよ。今まで一番！やっぱり美味しいもの食べてると、自然と笑顔になっちゃうよね！」


国見「…消せ」


A「やーだ！」


国見「…じゃあせめて見せて」


A「消したら恨むからね」


国見「盗撮しといて何言ってんの」





Aから携帯を受け取ると
画面に写された自分の顔は

確かに幸せそうに微笑んでいた


…そんな顔をしたつもりはないんだけど





A「ね、笑ってるでしょ？」


国見「…他の写真も見ていい？」


A「いいよ」





予想外な顔をする自分に恥ずかしくなり

話題を逸らそうと
カメラロールを遡る


Aの言う通り
確かにただの日常の一コマでしかない写真たち





及川さんや岩泉さんとの写真は勿論


水たまりに映る虹


鼻の頭に花びらを乗せた野良猫


青空に浮かぶハート型の雲





彼女らしい写真の数々


どれも普段過ごしていては
見逃してしまうような

小さな幸せたちだった





国見「あ…」





さらに遡ると現れたのは
6月に行われたインターハイの写真





国見「インターハイ、来てたの？」


A「うん！…2日目だけだけど、お母さんと。初めて行ったの。お兄ちゃんの試合。そこで英のことも知ったんだよ」


国見「俺？あー、レギュラーだったから？」


A「それもあるけど、同じ1年生で試合出てるのって凄いなぁって思ったし、お兄ちゃんくらいかっこいいなぁって思ったから」


国見「はぁ？」




屈託の無い笑顔で話すAを見ていると
どこか期待してしまう自分がいる





………期待…？

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