ふたり (ページ34)

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34. (side Hokuto) ページ34

「北斗どうした？肉ならもうすぐ焼けるって」

「あー…、じゃなくて」

「ん？そんな難しい顔してマジでどしたの？」

「いや、あのさ…昨日のこと謝りたくて」

「……は？」

俺の言葉に2人は不思議そうに顔を見合わせた。

「知らなかったとはいえ余計なこと言っちゃったから。嫌なことも思い出しちゃっただろうし、ごめん」

それには構わずに続けて、最後に頭を下げるとちょっとだけ顔を緩めた樹。

「え、北斗、こんな盛り上がってる中そんな事気にしてたの？」

「そりゃ気にするよ」

「真面目かよ」

「もーお兄ちゃん！そんな言い方しないの！」

Aに咎められてもなお、樹の顔がニヤニヤと崩れていく。

「…オマエ、可愛いな」

「うるせぇよ。人が真面目に謝ってんのに茶化すな」

「うん。そうだよね。北斗くんが合ってる。でも本当に気にしないで。お兄ちゃん昨日ちょっと悪い顔してたから」

「…え？そうなの？」

「言ってもさぁ小1の時の話なんだって。俺覚えてねーし。Aなんかそもそもの記憶すらねーし」

「そうそう。残念な事になんにも覚えてないからへーきだよ。こっちこそ気遣わせちゃってごめんね」

言いながらAが小さく笑う。

昨日高地から呼び出されたトークルームで、火事の影響で幼い頃のAの記憶がない事も聞いている。

〝別に禁句じゃないけど〟と前置きがあった上でそれでもそういった類の話はわざわざ話題にしない事を教えてくれた。

昨日のあれが半分冗談だったとしても、俺には2人の気持ちは計り知れないし、〝なんにも覚えてないからへーき〟なんて事はきっとない。

それでも2人に笑い飛ばされてしまえば、もう何も言えなくて、口を噤んだ。

「ふふ、でもお兄ちゃんじゃないけど、北斗くんて可愛いよね」

「……Aまで何言ってんの」

「だってさ、初めて話した日もさ、怒涛のように質問してきたと思ったら急に黙っちゃって。そしたら突然謝ってきたでしょ？」

「あー…そうだったっけ？」

「あの時1人反省会してるのかなって思ったら可愛くて」

「……バレてたんだ」

「うん。バレてた。今もシュンてなってるの可愛いよ」

「……嬉しくないのよ」

こう何度も〝可愛い〟なんて、それこそ可愛い笑顔で言われれば、途端に恥ずかしくなっちゃって。

思わず目を逸らす。