ふたり (ページ30)

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30. (side Hokuto) ページ30

俺は樹の家は知らないから、最寄駅で約束してみんなで行く事になった誕生日会。

ちなみにバーベキューを決行するという連絡が来たのはつい先程。

一応俺とジェシーは主役だから手ぶらで良いと言われてはいたけど、スーパーに寄って適当にお菓子を見繕ってから、時間通りに駅に向かった。

それぞれ持ち寄りの荷物をぶら下げて、初めて向かう田中家。

迎えてくれたのは樹の妹だった。

「いらっしゃい、準備出来てるよ」

「マジで？おっじゃましまーす！！」

慎太郎が元気に家に上がり込んだ。

妹の〝慎ちゃん、靴持ってって！〟と慌てて引き止める声に〝あーい〟と緩い返事をして。

脱いだばかりの靴を片手に、さっさと廊下を進む。

「ちょっと慎太郎ー！待ってよー！！」

〝あ、お邪魔しまーす〟とそれにジェシーが続く。

気付けばみんなが2人を追いかけるように部屋に上がっていて。

1人残された俺に、〝北斗くんもどーぞ〟と妹が優しく微笑んだ。

その顔にチクリと胸が痛む。

昨日は知らなかったとはいえ、俺と慎太郎のせいでトークルームが少しばかり思いもよらぬ方向に進んでしまったから。

あの後高地から聞いた話に、嫌な事を思い出させてしまったと反省もしたし、顔を見たら謝るつもりだった。

つまり2人きりの今、絶好のタイミングなわけで。

〝ねぇ〟いつものようにそう切り出そうとして、慌ててそれを飲み込んだ。

さすがに謝るんだから〝ねぇ〟だの〝あなた〟だの呼ぶのは失礼な気がして。

普段呼び慣れない彼女の名前を口にする。