19.(side Hokuto) ページ19
「は?誕生会?!」
嫌でも聞こえてきたうるさいくらいのジェシーと慎太郎の声に、思わず反応してしまった昼休み。
「あ、聞こえてたんだ」
弁当の焼売を口に運びながら高地が呟いた。
「そんなでっかい声で話してたら嫌でも聞こえるからね?で?誕生会がどうしたって?」
「いや、北斗も6月生まれなんでしょ?ジェシーも樹も6月だからさぁ」
「待て待て。おまえらなんで俺の誕生日知ってるわけ?」
俺の質問に当たり前のように答えた慎太郎。
この高校に編入してきて2ヶ月経つけど、誰かに誕生日を言った覚えはない。
「それはさぁ、北斗んとこの担任に聞いたに決まってんじゃん?」
「この学校の個人情報の取り扱いはどうなってんの?!」
「ちょっとぉ、個人情報って誕生日くらいで固い事言わないでよー」
賑やかしい声が昼休みの中庭に響く。
ここに編入してきた頃は、こんな風に誰かと一緒に昼ご飯を食べてる自分は正直想像出来なかった。
父親の仕事の都合で引越しが決まったのはまだ年が明ける前。
人付き合いは得意じゃないから、学校で話をする友人は数える程…しかも片手で足りる程しかいなかった。
だから別に引越しする事も編入する事もさして嫌だとは思わず受け入れた。
そんな自分がたった1年で新しい交友関係を増やせるとも思っていなかったから、高校生の残り1年は受験勉強に専念しようと決めていた。
だけど同じクラスにいたのが樹だった。
女子からやたらと黄色い声を浴びてヘラヘラ応える姿は、絶対に関わらないだろう人種だと思っていたはずなのに。
最初こそ物珍しそうに声を掛けてきたクラスメートも、俺の反応が薄いとわかるとだんだんとそれもなくなって。
誰とも話さず静かに過ごす俺が気になったのか、樹だけが唯一何かにつけて話し掛けてきた。
そしてズルズルと誘われるまま、この陽キャ集団の仲間入りを果たしてしまったというわけだ。
不本意ながらも、居心地は悪くない。
……が、勝手に人の誕生日を担任に聞くのはいかがなものか。
ていうよりさぁ…。
「そんなの俺に聞けば良くない?!」
「北斗教えてくれなさそうじゃん」
「誕生日くらい教えるよ!いくらでも答えるよ?!」
「じゃあ誕生日いつ?」
「6月18日だよ…ってもう知ってんだろ!!」
「AHAHAHAッ!」
ジェシーの笑い声にビクッと肩を揺らしたのは樹の妹。
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作者名:メロン | 作成日時:2024年1月2日 20時