ふたり (ページ17)

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「でも北斗くんがおんなじ駅だったのはお兄ちゃんも知ってるでしょ？あの状況じゃ一緒になっちゃうよ」

「〝松村さん〟が〝北斗くん〟になってっけど？」

「だって、そう呼んでって。ごめんね？」

「……許さない」

お兄ちゃんがまたギシリとベッドを軋ませて、体制を変えた。

組み敷かれる、ベッドの上。

「…お兄ちゃん？」

「…2人の時はなんて呼ぶんだっけ？」

「樹、」

「ん、良い子」

樹は優しく微笑んで、私の頭を撫でて。

おでこに軽く口付けた。

そのままコツンと樹のおでこがぶつかって、至近距離。

静寂の中、ドキドキと脈打つ鼓動を感じながら。

まるで時間が止まってしまったかのように見つめ合えば、世界中に私と樹しかいないんじゃないかと錯覚を起こす。

でもそんなのは本当にただの錯覚だし、私たちはどう足掻いても兄妹だ。

「………樹、寝よ？明日も起きれなくなっちゃう」

「………だな」

樹が私から離れて、ゴロンとベッドに横になった。

再びその腕の中に包まれる。

「北斗、良いヤツだよ」

「…うん」

呟いたその言葉の真意はわからないまま小さく頷いて。

樹の胸に顔を埋めた。

「……A、おやすみ」

「……おやすみ、樹」

鼻を掠めるのはお揃いの柔軟剤の香り。

優しく頭を撫でる大好きな樹の手。

このまま本当に時間が止まってくれたら良いのに、今までだって何度もそう願った。