ふたり (ページ1)

今日:538 hit、昨日:247 hit、合計:26,442 hit

1.(side Juri) ページ1

すっかりゲームに夢中になっていて、気付けばもう真夜中だった。

…マズイ。

また朝起きれなくてAに怒られる。

まぁでも今更だし、とりあえずトイレでも行って、寝るか。

コントローラーを置いて部屋を出る。

ついでのようにAの部屋を覗くのは習慣みたいなもんで。

寝てるであろうAを起こさないように静かにドアを開ければ、僅かにくぐもった声が聞こえてきた。

でもAが起きてるわけじゃないのはわかってる。

随分回数は減ったものの、Aは時々うなされる夜がある。

今日は運悪くそんな〝当たり〟だったらしい。

「A、」

そっと近付いて声を掛ける。

浅い呼吸の合間に苦しそうに声を漏らすAの額に薄っすら汗が滲む。

「A、大丈夫だよ」

手を伸ばして額を拭ってやりながら、そのまま優しく頭を撫でた。

もう片方の手でAの手を握る。

「大丈夫だから、ゆっくり息吸って」

苦しそうに顔を歪めながらも、Aの呼吸が深くなるのがわかった。

「そ、上手。もっかい」

そうして何度か深呼吸を繰り返したAの目がゆっくり開く。

俺を見て、ユラユラと瞳が揺れる。

「っは、じゅ、り？」

「そうだよ。大丈夫だから。俺ここにいるから」

握っていた手に力を込めれば、少し安心したように、揺れていた瞳が真っ直ぐに俺を捉えた。

そのうちに乱れた呼吸はすっかり治まって、Aの方もギュッと手を握り返してきた。

「…落ち着いた？」

Aが小さく頷いて答えた。