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美容師さんなんて仕事柄もあるんだろう、2人の話もやり取りも面白くて、アルコールも入ったおかげで楽しく時間は過ぎていく。
明日は日曜日。
私たちは休みだけど、仕事だろう2人を心配して"そろそろ帰ろうか"と言い出したのは山田さんだった。
いつの間にか会計は済んでいた。
"金はいーから、その代わり今度絶対店に来てね"と2人の笑顔が添えられる。
さすがに慣れている。
「家どっち？」
4人で駅に向かう途中。
ふと田中くんに聞かれて最寄駅を言えば、その目がまん丸になった。
「どうしたの？」
「…俺も。俺の最寄りもそこ」
「…へ？」
「すげぇ偶然。どっかで会った事あるんじゃね？」
「…会っても多分私は気付かなかったよ」
「まぁ、最初全然わかったなかったもんな」
それはそうだ。
だって、高校生の頃校則に違反して少しだけ茶色かった髪はシルバーだし。
着崩していたものの制服姿の田中くんしか私は知らない。
私服で歩いてる姿を目撃しても、絶対気付かない自信がある。
「でももうわかんでしょ？」
「うん。もうわかる」
「見掛けたら声掛けてよ。俺も掛けるし」
「だから恐れ多いよ」
「…松村さんて俺の事なんだと思ってんの？」
「住む世界の違う人」
「さっきからちょいちょい距離取んのなんなの？」
話を聞いていた山田さんと京本さんはクスクス笑っている。
"樹、がんばれー"
"田中くん、負けないでー"
なんて声が聞こえてきた。
駅に着いて2人と別れて田中くんと同じ電車に乗り込んだ。
いつもより遥かに遅い時間の電車は人も疎で、並んで腰を下ろす。
さっきまでは気付かなかったけど、隣にいると田中くんから凄く良い匂いする。
香水かな。
あとはほんのりタバコの残り香。
昔匂いに悪酔いしちゃった事があって正直香水って苦手だし、タバコも吸わないけど、田中くんの匂いは好きかも。
……て何考えてんだ、私は。
これじゃあ、ちょっとした変態だ。
1人で勝手に恥ずかしくなって、浮かんだ考えを消し去りたくて、小さく頭を振っていると"どうした？気持ち悪い？"と田中くんに顔を覗き込まれた。
甘い香りは消えないまま。
心配そうな田中くんの顔がすぐそこ。
心臓が忙しなく音を立て始める。
「な、んでも…ない」
「そ？なら良いけど」
顔が熱いの、きっとバレた。
案の定田中くんの顔が緩んだ。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
