同級生の田中くん (ページ7)

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田中くんに名前を呼ばれて我に返ると、京本さんが"揶揄い過ぎたね、ごめん"と罰の悪そうな顔をした。

あからさまにしょんぼりする姿もまた絵になるから困っちゃうけど。

"大丈夫です"と返せば、再び会話が始まった。

田中くんと京本さんは専門学生の同級生で、同じお店に就職したとか。

今日は交流会の主催者のお客さんに頼まれいて、新規顧客の獲得がてら参加したとか。

つまり山田さんとも知り合いのその人について3人で話してる様子を、チビチビとお酒を飲みながら静かに聞いていた。

…はずだった。

「ねぇねぇ、松村ちゃんて高校の頃どんな子だったの？」

いつの間にか話題は変わっていたようで、山田さんからの突然の質問に驚いた。

多分私に向けられたものじゃないけど、間に割って入る。

「いつも言ってるじゃないですか。1人で本読んでる陰キャな子だったって」

「私は田中くんに聞いてんの。だって不思議じゃない？可愛いのに彼氏の1人もいなかったんだって言うんだから」

「…山田さん余計な事言わないでください。そして可愛くないです」

「で？田中くん、どうなの？」

私の言葉は無視して、前のめりになる山田さん。

田中くんは少し考えて。

「いや？普通に可愛かったですよ？」

なんて言い出した。

山田さんは"だよねー！"と何故だか少し嬉しそうだ。

「んー、でもすげぇしゃんとしてるイメージです。話し掛けてもだいたい本に勝てなかったし。あれ？でも彼氏はいたよな？」

「やっぱりー！」

隣に座る山田さんに肘で腕を小突かれる。

そんなの社交辞令に決まってるし、勝手に彼氏がいる事になってるから恐ろしい。

「田中くんも変な事言わないでよ」

「変な事は言ってねーだろ。年上の彼氏、いたじゃん。よく車で迎えに来てもらってて、俺も見た事ある」

「ほらぁ」

「ほらぁってなんですかほらぁって。確かにお迎えは来てもらってましたけど、彼氏じゃないです」

「…じゃあ誰だよ」

否定する私に、田中くんがビールを飲みながら眉間に皺を寄せる。

「誰って、お兄ちゃん」

「…………は？」

高校生にもなってお兄ちゃんが迎えに来てたなんて恥ずかしいけど、素直に口にすると今度は田中くんの顔が驚いたように固まった。

うちのお兄ちゃんちょっと過保護っていうか…心配症な所があって。

大学生になって免許を取ってから、暇を見つけて確かによく来てた。