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みんなの会話を聞きながら、ついそんな事を考えてじっと田中くんを見ていると目が合った。
"ん？どした？"と片眉が上がる。
「あ、の…えっと…髪の毛綺麗だなって」
「絶対違う事考えたよな？でもまぁ、ありがと。染めたばっか」
「疑問だったんだけど、2人はそんな頭でなんの仕事してるの？」
「俺もきょもも美容師です」
「え？そうなの？凄いね！」
「凄くはねぇだろ」
「ちなみにこれやったの俺ね。良い色でしょ？」
「うん。似合ってる」
「きょものヤツやったのは俺ー」
"ねー"って2人でニコニコ笑い合っている姿がまぶし過ぎる。まさしく眼福。
まぁ…さっきのウソがウソに聞こえない程度に距離は近いけど。
せっかくだから気付かない事にして眺めておく。
「良かったら松村さんもうち来てよ。同級生だしサービスする」
「…恐れ多いよ」
「恐れ多いってなんだよ。マジで距離取んなって」
ニコニコの京本さんから離れて、ポケットに手を突っ込んだ田中くんは、名刺入れからカードを取り出した。
「はい、これ」
多分、田中くんの勤めてるお店のショップカード。
山田さんもどーぞ、と手渡して。
「店でも良いし、個人的に連絡してくれても良いし。あ、そうなると連絡先交換しとかないとじゃね？」
なんてあっという間に私と山田さんのスマホに田中くんと京本さんの連絡先が追加された。
さすが陽キャ。さすが一軍。
連絡先を聞き出す手口が鮮やか過ぎる。
「指名は京本でお願いします」
「なんでだよ。少なくとも松村さんは俺だろ」
「それはAちゃんが決める事じゃない？」
「…そうだけど。それより急に呼び方慣れ慣れしくない？」
「んふふ、別に良いでしょ」
京本さんがさっき田中くんに見せてたみたいな顔で"ねー？"と可愛く首を傾げてくる。
不慣れな私はどうして良いかわからなくて同じように首を傾げてみたら、今度はウィンクが飛んできた。
…どうしよう。私の心臓、今日止まるかもしれない。
「やべ、固まっちゃった」
「もー！きょも！！」
「ごめんごめん。Aちゃーん！帰って来てー！樹に怒られるー！」
楽しそうな京本さんの笑い声が微かに耳に届いた。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
