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「……だって田中くんも悪いでしょ？」
人の事揶揄って。ニヤニヤ面白がって。
田中くんも少しくらい反省した方が良い。
そして揶揄うのはもうやめていただきたい。
「俺は悪くねーよ」
なのに悪びれる様子もなく田中くんはそう言って。
「勝手にきょもと仲良くなってんのが悪い」
なんて人のせいにした。
「うわ、最低だよ」
「何処がだよ。ただの可愛いヤキモチだろ」
「全然可愛くなかった」
「まぁ、固まっちゃったし逃げちゃったもんな」
「…もういい加減揶揄うのやめてよ」
「別に揶揄ってるわけじゃねーって前も言わなかったっけ？」
「あんなの揶揄ってる以外考えられない」
「…確かにこないだはちょっとやり過ぎたかもだけど、ただ揶揄ってるだけの子から返事ないくらいで待ったりしないよ、俺」
しかもまるで反省してくれる様子はなく、"そんなに暇じゃねーし、そんなに困ってねー"とか言い出す始末。
でも、言われてみればそれもそうかと納得しちゃう私は短絡的だろうか。
「俺、本気だよ」
さすがにそこまで言われるとまた冗談に聞こえるけど。
珍しく真面目な顔する田中くんは珍しく真面目なトーンだから、少し戸惑う。
「松村さんそういうタイプじゃないだろうから軽率に手ぇ出したくねーし、それで嫌われんのは嫌だし。だけど俺の事は意識して欲しいから、結果、揶揄ってるって思われてんのかもだけど。全部マジで受け取ってくれて良い」
「…ごめん。ちっとも意味がわかんない」
「考えようとしてないだけだろ」
「…考えなしのバカって事？」
「言ってねーよ」
正直本当に意味がわからないのだ。
頭の中にハテナしか浮かばなくて、ポカンとする私に呆れたような笑顔をこぼした田中くんは、"つまりさ"と続けた。
「俺、松村さんの彼氏に立候補する」
「……………は？」
「あーあ、また固まっちゃった。おーい、戻って来ないとここでキスすんぞー」
目の前で手をヒラヒラさせながら、田中くんがとんでもないワードを吐き出した。
"キス"に反応してこないだの出来事が頭を過ぎる。
"誕生日プレゼントはAが欲しいなぁ"と囁かれたセリフと。
蘇る感触のせいで耳に熱が集中する。
「……むりむりむり。やっぱ無理！全然軽率！！」
「あ、なんか思い出しちゃった感じ？耳真っ赤。んはっ、かっわい〜」
嬉しそうな田中くんが放つ"可愛い"は、やっぱり揶揄われてるとしか思えない。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
