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約束したお店の前、窓に映る自分を見て少し頬が緩んだ。
きっと田中くん驚くだろうな。
それにもしかしたら大我くんの言うように喜んでくれるかもしれない。
なんて単純に少しワクワクしてる自分がいる。
いつもだったらそんな事思わないのに、ちょっと浮かれてるのはやっぱり可愛くしてもらったせいだと思う。
「ごめん。遅くなっちゃった」
店に入るとすでに田中くんは到着していて、スマホを弄っていた。
目の前に腰を下ろしながら声を掛けた私に、パッと顔を上げた田中くん。
「いや、俺も今来た…とこ」
言いながらその視線が固まった。
それから一気に顔面が崩れた。
「はっ、かぁいい、」
「……変じゃない？」
「めちゃくちゃ可愛い。何？俺と会うから可愛くして来てくれたの？」
「いや、まぁ…そうなんだけど。自発的というよりは大我くんが、」
事の次第を説明しようとそこまで言ったところで"待って待って待って"と田中くんに止められる。
嬉しそうに崩れた顔があっという間に元に戻ってしまった。
「ごめん、まず"大我くん"の説明からしてもらって良い？」
「説明も何も田中くんも良く知ってる京本大我くんだけど」
「わかってるよ！そうじゃねーよ！なんで急に"大我くん"になってんのかって話だよ！」
「なんでって、そう呼んでって言われて」
「…いつの間に？」
「さっき？」
「ここ来る前にきょもに会ったって事？」
「会ったっていうかお店に来て欲しいって連絡もらって…まぁ会ったって事になるのか」
「…あー、それできょもにやってもらったの？」
察したように私の頭にチラリと視線を移して、何故か溜息をついた田中くん。
「…もうすぐ田中くん誕生日だから喜ばせたいって。協力してって頼まれて」
それでも一応足りない部分を簡潔に説明すると。
「だとしたらそれは言わない方が正解だったわ」
ぶっきらぼうに呟かれる。
"それ"とは一体どれだかわからなかったけど、聞き返す勇気はなかった。
最後には"とりあえずなんか頼むか"とメニューを広げられ、話は終了した。
大我くんとお姉さんには申し訳ないけど、田中くんを喜ばせる事は私にはやっぱりハードルが高かったみたい。
むしろちょっと機嫌を損ねてしまった。
そしてちょっとワクワクしていた自分が死ぬほど恥ずかしい。
穴があったら入りたい。
なんならこのまま消え去りたい。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
