37. ページ38
"明日の樹とのデートの前に店寄れる？"
突然京本さんからそんなメッセージが届いたのは昨日の事。
田中くんと"次"の約束は今回も簡単に決まっていたんだけど。
京本さんに呼び出されるような事は何一つ覚えがない。
しかも突然の呼び出しの理由は教えてもらえず、"来たらわかる"の一点張り。
仕方なく店に来たら、何故か今、美容室の椅子に座らされている。
「…あの、デートじゃないから」
「え？！最初がそこなの？？」
鏡越しに目が合った京本さんに訴えると、"Aちゃん面白いね"と吹き出した。
「ちゃんと訂正しておこうと思って」
「いや、男女2人でご飯行くのは立派なデートでしょ」
「…それより今日は何の呼び出しなの？」
「えー、会話にらないんだけどー」
と笑いながら、京本さんの指が私の髪の毛を優しく梳いた。
「何って髪の毛セットするに決まってるでしょ？ここ美容室だよ？」
「…え？」
「もうすぐ樹誕生日なんだよねー」
「……え？！」
京本さんこそ脈略がなくて、会話が成立しないというか、返事に困る。
…ていうか今なんて言った？
「田中くん、誕生日なの？」
「あれ？知らない？6月15日」
「え？！知らない！」
6月15日…別に今日ではないけどプレゼントなんて用意してない事に少し焦る。
いや、私は田中くんにプレゼントをあげるような立場なんだろうか。
そもそも知らなかったんだし、まだ先だしまぁ良いかと呆気なく安易な結論に辿り着いた。
それよりも田中くんが誕生日だという理由で、京本さんが私を呼んだ理由の方が気になる。
「なんでって顔してる」
「うん。田中くんの誕生日だからなんだろうって思ってる」
「実は俺、樹にサプライズプレゼントようと思ってて。Aちゃんに協力して欲しいの」
「私に出来るならするけど、それと髪の毛やるのは関係ある？」
「大アリ。サプライズプレゼントだから」
再び鏡越しに目が合った京本さんが、私を指差すからますます困惑する。
「ごめん。本当に意味がわかんない」
「だから、Aちゃんがプレゼント。当日じゃないのが気に入らないけど、可愛くなって樹の事喜ばせて来て欲しいの」
「え？！可愛くなるのも喜ばすのも無理だよ！てかプレゼントって何？！」
「大丈夫。俺に任せてー」
私の抗議の言葉は聞き入れてもらえず、ニコニコとその目が笑う。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1056人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
