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思わず固まる私に、"今日も可愛い反応してくれんね"と満面の笑顔の田中くん。
「か、揶揄うのやめて」
なんとか絞り出したか細い声に、田中くんの細い指…でもちゃんと男の子のそれが再び私の髪を梳きながら。
「いや？揶揄ってるつもりはねーよ？」
なんて言われても、ニヤニヤする口元が抑えきれてなくて。
「いや、絶対揶揄ってる」
「マジで揶揄ってるつもりはねーけど、いちいち反応良過ぎんだもん。しょうがなくね？」
「…全然しょうがなくないよ。もう離れてよ」
私の抗議に、渋りながらもようやく田中くんが離れてくれて胸を撫で下ろした。
気持ちを落ち着かせようとグラスに手を伸ばす。
一気にゴクゴクと飲み干した。
「おいバカ！それ俺の！！」
田中くんの制止は一足遅かった。
でもおかげで田中くんの事1つ覚えた。
どうやら田中くんてお酒が強いらしい。
喉が焼けそうなほど熱い。
僅かに聞こえてくる話し声にうっすら思考が回り始める。
薄暗い部屋に浮かび上がる液晶画面と、ほっくんとは違う背中。
ズキズキと頭が痛むし、少し気分も悪い。
それでもなんとか体を起こすと、その背中が反応して振り向いた。
「ごめん。ちょっと待ってて」
それだけ言って再び背を向けたのは田中くんだ。
そして見慣れないこの部屋はきっと田中くんの部屋で。
私はその、田中くんが日々寝ているであろうベッドの上。
気分悪いし横になりたいけど、それに気付いた今、再び寝る勇気はなかった。
オンラインゲームでもしているのか楽しそうに話す声が耳に届く。
浮かび上がる画面を目で追いながら待っていると、そのうちに田中くんがコントローラーを置いた。
徐に立ち上がって、こちらに近付いてくる。
「…ごめん。迷惑、掛けたんだよね？」
「迷惑って程ではねーけど」
"大丈夫そ？"と私の隣に腰掛けて、顔を覗き込まれる。
あんまり大丈夫な気はしないけど、小さく頷いた。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
