同級生の田中くん (ページ28)

今日:55 hit、昨日:138 hit、合計:242,323 hit

27.(side Taiga) ページ28

Aちゃんみたいにわかりやすく固まってはくれなかったけど、ほんのりと耳が赤く染まっているのは見逃さなかった。

それに美容師としての腕を褒められるのは素直に嬉しいしね。

「良かったら次回の予約も取っておきます？」

クルリとセットチェアを回転させて、膝掛けを取りながら聞いてみると"お願いしようかな"と山田さん。

そのままレジに案内して予約を確認する。

さてさて。向こうはどんな感じだろう。

山田さんとAちゃんは一緒に帰るんだろうし、樹の方を見るとそろそろ終わりそうだけど。

鏡に映るAちゃんの変わりように驚いた。

樹が可愛いって思い出にするような子だから、Aちゃんは確かに顔は可愛い。

でも彼女の性格のせいか、今まで培ってきたものなのか、何処か垢抜けないというか。

ちょっと勿体無い感じがしないでもない。

言い方は悪いけど、彼女の言葉を借りれば2人はまさしく"住む世界の違う人"なんだと思う。

まぁだから楽しそうだとも思ったんだけど。

きっと樹に"可愛い"と何度も褒められてんだろう、照れて頬を染める所は変わらないのに、まるで違う子だ。

「Aちゃんの方もそろそろ終わると思います。待つならここでどうぞ」

「あ、松村ちゃんは田中くんと帰るみたいだから」

「そうなんですか？まぁ、この時間に終わったらそうなっちゃうか」

「うん。だから帰る」

「…そうなんだ」

次回の予約を抑えて、会計を終えて。

「そうだ。今日京本くん忙しそうだったよね。もしかして無理してくれた？ごめんね」

やっぱり彼女は勘が良い。

それにAちゃんも可愛いけど、"ありがとうございました"と微笑む山田さんの方がやっぱり俺はタイプなんだよね。