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「田中くんは？食べたいものある？」
「俺だいたい頼むモンて決まってんの。冒険とかしないタイプ。美味くなかったらやじゃん？だから松村さんが代わりに冒険してくんね？」
「えー、それで食べれなかったら困る」
「別に冒険しないだけで食えないわけじゃねーから」
「…じゃあせめて絶対外したくないもの教えてよ」
「あー、じゃあピザ。この、」
田中くんがメニューの中から"これ"とトントンと指差したのは、私も食べたいと思ってたのと同じヤツ。
あ、良かった。
「それ美味しそうって思ってた」
「めちゃめちゃ美味い。毎回これ食ってる」
「じゃあそれと、あとは…」
店員さんを呼んで目に付いたものを何品か注文する。
「…と、ビール？」
最後に確認する為に田中くんに視線を向ければ、何故か少し頬を緩めて僅かに頷いた。
「…なんか面白い事あった？」
店員さんがいなくなったのを見計らって、メニューを閉じながら。
その緩んだ頬の理由を聞けば"面白いっていうかさ"と田中くん。
「なんかすげぇなって」
「…何が？」
「目の前に松村さんがいるの」
「…珍しい動物みたいな言い方しないでもらって良い？」
「似たようなもんだろ。なんなら存在も危うい」
「え、今目の前にいるって言ったじゃん。何、田中くん幻見てる？」
「可能性はある」
「ないよ。可能性ゼロだよ。普通に存在するし、普通に生息してる」
「普通に生息してたらメール無視しねぇんだよ」
多分、メールを無視する人はたくさんいると思うけど。
既読スルーって言葉もあるくらいだし。
それでも"健気に返事待ってた俺かわいそー"なんてわざとらしく悲しそうな顔されちゃうと、少し申し訳なくなってくる。
「…それはごめん」
「悪いと思ってんなら今度からはちゃんと返事して」
「…はい」
上手い事丸め込まれた気がしてならないけど、頷いた私に田中くんは満足そうで。
ちょうど運ばれて来たビールに"お、うまそ"と視線を移した。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
