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田中くんは小さく笑いながら私の手からコンビニの袋を奪った。
それを覗き込んで"あ、このスルメ美味いよな"なんてこぼして。
「これ、俺と一緒に松村さんちかうちで飲むのとこないだ言ってた店行くのとどっちが良い？」
とんでもない2択…いや3択？を満面の笑みで突き付けてきた。
「えっと…どれも遠慮したいです」
「それは選択肢にねーんだわ」
「心の準備が…」
「いらねぇから。決めないなら俺が決めるけど」
「じゃあせめて！せめてお店で！！」
「あ、そう？うちでも良かったのに」
なんて片眉を上げて、ニヤリ。
その顔が近付いてきて思わず一歩後ずさる。
だけど簡単に距離を詰められて、耳元に唇を寄せられた。
「まぁそしたら朝まで寝かさねーけど」
「！！！」
どうやら田中くんは笑顔以外も圧倒的に心臓に悪いらしい。
直接鼓膜を揺らした言葉に肌が粟立つ。
顔に熱が集まるのを感じながら、思考は停止した。
「ふはっ、固まっちゃった。朝まで飲もうと思っただけなんだけどなー。どんな想像してんだろーなー」
なんて固まる私に、ニヤニヤと揶揄う田中くんの声が遠くに聞こえた。
「どうする？何食いたい？」
田中くんが美味しいと話していたお洒落なダイニングバー。
テーブルを挟んだ向かいで田中くんがメニューを広げてくれる。
覗き込んでみてもどれも美味しそうで悩む。
ピザも良いし、パスタも良い。
普段家では絶対作らないアヒージョとか、ガッツリお肉系も捨て難い。
でもビール飲んだらきっとそんなには食べられない。
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作者名：メロン | 作成日時：2023年6月4日 20時
