はじめてのひと。-ZELO-【2】

はやく ページ29

ZL『ありがとうございます、うん、ぼくもだいすきです』





聞きなれた日本語が飛び交う。


こんにちは ありがとう だいすき あいしてる


単語も少しだけ、聞き取れる

分かる言葉には返事ができる

でもそりゃあ、わからない言葉の方が多くて

ただ笑顔で頭を下げるしかない自分に嫌気がさしたりした。

でも、Aヌナから教わった言葉も

少し聞き取れたから、嬉しかった。





『ジュノンくん』

ZL『え？』

『カードください〜』

ZL『あ、はい、すみません』





ちょっとでも気を抜くとすぐ、Aヌナのことを考えた。

今だってほら、ジュノンくんって言われただけで

勘違いしてしまうほどに頭の中がAヌナでいっぱい。

はやく、はやく

控室に戻りたいよ。





スタッフ『大変申し訳ありませんが、今並んでいる人で終了させていただきます！残りのお渡し券を持っている人は後に公式から振替イベントの通知がありますのでそちらをご確認ください！気を付けて帰ってください！』





会場からブーイングが飛ぶ。

そりゃあ、そうだ

今日のために、たくさんたくさんCD買ってくれた人がたくさんいるんだ。

でも

ごめんなさい

この人たちに渡したら終わりだって

そういう考えの方が勝ってた。







どうしよう、僕

本当にAヌナが好きなんだ。






そんなことを頭の片隅で考えながら

残りのファンの人にカードを渡していた。

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