故意じゃないほうがいい (ページ4)

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だけど、わたしが大学を卒業する前に彼は大阪を離れていった。
いつの間にか彼が居酒屋をやめていたことも、連絡がつかなくなっていたことも、全部なくなってから気づいた。

彼がいつの間にか舞台を飛び出すくらいの芸人になっていたことも、キングオブコントで若手らしかぬすごい結果をおさめたのも、それが一年も昔の話だってとも、それから芸人界隈を騒がせる事件を起こしたのも、それで敵ばかりになって、大変なことになっているのも知っていたけど、わたしはとうすることもできないから。
それでも彼が大好きだったわたしは大馬鹿者だと思う。

もういないのにそこにいないのに追い求めていたわたしはバカだった。
彼が私のラインを思い出して、気分バラシに連絡してきてくれないかとまで思ってしまった。

仮に、彼が連絡をするとして、私ではないことは明確だったのに。彼にとって私は若手時代の遊びの女でしかない。300人のおんなのひとり。

ただの、居酒屋店員だった彼はいつの間にか芸人として名を知られる程になっていた。

大学を卒業したわたしはそのまま大阪に残ることなく、東京に戻り会社に就職をした。
将来の夢とか、そういうのが無い人間だった。
「やりたいこと」を「仕事」にして歩んでいく彼のような一握りの人間や、「やりたいこと」が「夢」で終わり「夢」より「現実」を見なくちゃならなくなる葛藤と戦う大勢の人々、私はどっちでもなかった。

そもそも夢もないなにもない薄っぺらの中身のない一番つまんない人間だった。

彼と自然に会わなくなってから何も彼だけを思い続けていたわけではない。その間も恋愛はしたし、こんな私のことを大切にしてくれる彼氏もいた。ときに喧嘩してわらってきっと世間的に見れば愛し合っていて、だけど、彼と過ごしたあの３年に比べたらそれは愛とはおおよそいえない

小さな関係だと思ってしまった

そんな関係長く続くはずがない。いつの日か「ごめん」は口癖になっていて、その気にさせた関係を懺悔するかのように関係を断つという、「最低」と言われても仕方ないことを何度も何度も何度も繰り返していた。
まるで、彼との時間を埋めるかのように。

彼の起こした事件も少しずつ許されつつある。それくらい年は経ってしまった。

あの頃からちっとも変わっていない懲りない彼がインスタとかのDMを使ってそういう女の子を集めているのは知っていたし、そういうことをネタにしていることも知っていた。