運命を乗り換えて ページ27
「なに…………やって、だ」
腹部に走る、激しい痛み。
私は政道に抱きついたまま、赫子を自分にも貫通させた。
背中から伸びた赫子で政道と私は串刺し状態になってる。
「_____わた、も、
せいど、と、おなじ……いたみ、」
「……！」
同じ痛みを、傷を、刻みたかったの。
政道が罪を犯したというなら、わたしだって……
「わた、だって……罪、」
罪なら犯したよ。
あの時子どもだったから、政道を守れなかった。
パパとママを亡くして、それが辛すぎて、
もうこれ以上こんなに辛いことは起きないと信じてしまっていたから。
逃げてたのかもしれない。
「ばっ………か、」
「だいじょ…ぶ、」
Qsの自分の赫子は、自分が負傷しても致命傷にはならない。
「だから……この傷を背負、て……いきてく、から」
ふたり抱き合ったまま倒れ込む。
「なん………
な、だ、それ……」
政道の腹部は、赫子が強く貫通して多量の血が溢れ出ていた。
「ほん、と……A、は……」
政道はすこし困ったように、微かに笑った。
「……な、A」
「ん、な……に」
ふたり顔を近づければ、おでこが重なった。
「名前……よん、で」
「……政道、」
政道は、満足そうに目を閉じて微笑んだ。
「A」
ああ、身体が重い。
きっとこれからしばらく入院する事になるんだろうな。
ねえ、政道。
さいごにこれだけ、伝えさせて。
「……だいすき」
「……愛してるよ」
「……！」
合わせた額と握った手はさいごまで離さないままだった。
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作者名：惰 | 作成日時：2023年7月21日 23時
