01 ページ2
.
.
「彼女…欲しい…」
.
弱々しい声でそう呟き、木製の洒落たテーブルに突っ伏した1人の青年。本高克樹、26歳。
克樹は都内のある会社の営業部で働く、ごく普通のサラリーマン。
端正な顔立ち、170センチを超える身長、更には高学歴という女性は大喜びするスペックの持ち主。
だが、
.
実は彼女いない歴＝年齢だったりする。
さっきも言ったように、かなりハイスペックなイケメンなので、周りからはお世辞抜きで「モテるでしょ？」「相手には困らないね」と言われているが、
ガチでモテない。
.
理由は本人も分からない。
そして周りの人間も「なんでこいつはモテないんだ」とわかっていない。
ただ、周りの人間はみんな、「こいつとは友達くらいの関係で充分」と思っている。
恐らく、そう思われてしまうような中身がモテない原因なのかもしれない。
今日は、全くモテない悲しさをぶちまけるために、会社終わりに同僚のAを連れて居酒屋に来ていた。
都内のかなり洒落た居酒屋。
今どきのウェイウェイ系の若者たち(？)が集まっていると思いきや、店内の至る所でカップルたちがキャッキャウフフしているため、何故かカップルの溜まり場と化してしまっていた。
克樹の傷を抉るようなこの状況。カウンター席では、楽しそうに手を繋ぐカップルが視界に映った。けしからん。
ちらりと後ろを見るとペアルックの男女2人組が料理を食べさせあっていた。けしからん。
ペアルック…と1度考え込んだあと、克樹は自分の服装を見た。
見慣れた紺色のスーツ。ネクタイはワインレッドのお気に入りのもの。
ある意味目の前のAとはペアルックなのかもしれない。Aもスーツを着ているし。
「克樹、最近ちゃんと寝てる？」
「え、うん、寝てるけど」
Aが心配そうに俺の顔を覗き込むので、手鏡を借りて自分の顔を見ると、やつれた頬や目元のくまがかなり目立っていた。
最近はかなり仕事が忙しく、疲れが溜まっているのかもしれない。いつもの食欲も今はあんまり…って感じだし。ちゃんと寝てるつもりなんだけどなぁ…。
「でも、」
「そんな疲れを癒してくれる彼女もいないんだよなぁ…」
「大丈夫、克樹なら絶対できるって！」
「それ何回目だよ…」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 29人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：浅漬け | 作成日時：2021年1月15日 0時
