満開な花を君に。2 (ページ6)

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織姫と彦星より 2 ページ6

七夕なんて、今まで意識したことなかったな。
ここへ来てからクリスマスとかバレンタインとか、イベントごとには何かしらの形で関わっている気がするけど、七夕は今の今まで頭の中から消えていた。
まぁ、土曜日はちょうど休みだし、夕方以降なら涼しくなっているだろうから、彼女を誘って夕涼みに行ってもいいかもしれない。
あとで声をかけてみよう。
そんなことを考えながら着替えを済ませ、夕飯を食べるために談話室へと戻った。
すると先程まで作られていたてるてる坊主たちが、５連くらいになって吊るされている。
おお、わりと迫力あるな。

至｢てるてる坊主、完成？｣
『はいっ！劇団員の数分作ってみました！』
至｢24+2ってこと？多すぎ、ワロ。｣
『これで七夕の夜は晴れてくれるはずです！』

彼女は鼻息荒く自信満々に語った。
正直彼女のこういう所を可愛いと思う。
いつもは監督として皆をまとめあげてるのに、こういうところで素直というかお茶目というか。
気がついたら目が離せなくなってた。
でも、この関係を崩すのが嫌で、俺は何も言えないでいる。
言えたらいいと思うけど、言うタイミングもないし、何て言ったらいいのかわからないというのが本音だ。
だから、なるべく傍にいたい、それだけでよかった。

至｢監督さん、七夕の日予定ある？｣
『他劇団のお手伝いは昼過ぎには終わるので、午後なら大丈夫です。』
至｢じゃぁ、さっき言ってた夕涼み会、一緒に行かない？折角だし。てるてる坊主の効果を確かめに。｣
『？！いいんですか？！やった～！楽しみにしてますね！何を着ていこうかな～っ。』

約束を取り付けた俺は、隣でウキウキとする監督さんに思わず頬を緩ませた。
そのあとは普通に夕飯を済ませ、ゲームして、風呂に入って寝た。
平日は仕事をこなし、約束の土曜日が来る。
一緒に寮から出ると他の奴等が煩いからと外での待ち合わせ。
時間と場所をLIMEで送ると、了解のスタンプが返ってきた。
俺は約束の時間より少し早く寮を出て、近くのカフェで時間を潰す。
これから夕涼み会に行くであろう家族連れやカップルたちが、ガラス越しに歩いていくのをじっと眺めた。
腕時計の時間を確認して、待ち合わせ場所へと向かうが、まだ来ていないらしい。
女の子に声を掛けられたりもしたけど、当たり障りなく断り続ける。
人混みは苦手だし面倒だけど、彼女との二人の時間には変えられないと、ゲームをしながら待つことにする。