ゼロ距離 4 ページ34
眉をハの字に下げて、淋しそうに笑う。
左京「寮でも呑めるだろ。」
『外で!二人きりで!が良かったんです…。』
左京「…お前、それがどういう意味かわかってんのか?」
こいつも酔っているのだろうか。
頬をほんのりと染めて、上目遣いで見上げてくる。
柄にもなく、心臓が音を立てて騒ぎ始め、理性が音を立てて崩れ始めているのを自覚する。
左京「…今日帰れなくてもいいなら、付き合ってやる。」
『?!いいんですか?』
左京「あぁ。」
『帰りたくないです、左京さんといたい。』
左京「っ…お前な…。…帰してやらないから、覚悟しろよ。」
雨に濡れないように肩を抱き、近くにあるホテルへと足を向ける。
仕事関係の都合で伝のある場所だったので、カウンターへ声をかければ、空いている部屋を用意してくれた。
鍵を開けると、広々としたリビングとベッドルームが広がる。
急に来たにしてはいい部屋だな、と思っていると、Aは靴を脱いでベッドへと寝転んだ。
『うわー!ベッド大きいですね!それに綺麗です!』
左京「ったく…子どもか。」
『左京さんの前だと緩んじゃうんですよね〜。』
左京「……。」
自分も靴を脱ぎ、彼女に近付く。
覆い被さるように彼女の顔の横に手をつくと、驚いた表情を見せる。
『さ、左京、さん…?』
左京「無防備すぎる。あんな男、ハッキリ断れ。」
『う、すみません…。でも…』
左京「?」
『左京さんと二人になれたので、私はこれでよかったです。』
そう言ってへらりと笑う。
思わずぎゅっと抱き締めて、首筋に顔を埋めた。
すると、背中に細い腕が控えめに回された。
『…左京さん。』
左京「…なんだ。」
『好きです、左京さんのこと。大好きです。』
左京「!……俺もだ、あの時から、ずっと、お前だけだ。」
『えへへ〜。』
少し体を離して、至近距離で見つめ合う。
どちらからともなく近付く距離は、唇が合わさることでゼロになる。
左京「…酔ってて覚えていないとか言うなよ?」
『当たり前ですよ!それに、そんなに酔ってないです!』
左京「ふっ、どうだかな。」
何度も重なる唇。
その度に二人でシーツの海へと沈んでいく。
あれだけ強かった雨の音も、もう何も聞こえなかった―――
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作者名:宇宙 | 作成日時:2018年6月29日 11時