ゼロ距離 3 ページ33
『あの、本当に、ここまでで…駅もすぐですし。』
｢いやいや、うちの方が近いから。傘貸すし、ね、行こうよ。｣
『いや、帰れるんで…！』
聞き慣れた声の方へと視線を向ける。
今日手伝いに行った先の団員であろう、酔っ払った男に絡まれたアイツを見て、頭に血が昇っていく。
カツカツと靴音を鳴らして、赤信号も無視して、彼女のもとへと向かう。
左京｢Aっ！｣
『っ？さ、左京さん？！』
｢あ？誰？｣
彼女の腕を引き、自分の傘へと招き入れる。
肩を抱き、男と引き離すように自分の体をその間に割り入れた。
左京｢うちのが世話になったようで…送っていただいてありがとうございました。｣
｢なんだ、彼氏いるんだ。どーいたしまして。また何かあったら宜しくね〜。｣
案外あっさり引き下がった男に、ふぅと安堵の息を吐き出す。
ポカンとしたAは、俺を見上げて、頭にハテナを浮かべていた。
『さ、左京さん？本物？』
左京｢偽物だと思うのか？｣
『ほ、本物だ…！む、迎えに来てくれたんですか…？』
左京｢…お前のためにしか、こんなことしないからな。｣
小声で呟いた本音。
雨に消えてしまっても構わなかった。
無事でいてくれた、それが何よりだ。
ぎゅ、と無意識に強く抱き締めていた肩を、名残惜しく思いながら少し離した。
左京｢…帰るか。｣
『ん…左京さん、車ですか？』
左京｢そうだが？｣
『そっか…残念。』
左京｢ん？｣
俯いた彼女。
何を言い出すかと首をかしげれば、ポツポツと話始める。
『左京さんと二人で外にいるなんてなかなかないので…呑みに行かないかな、と思ったんです。でも、車じゃお酒呑めないですもんね…』
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作者名：宇宙 | 作成日時：2018年6月29日 11時
