満開な花を君に。2 (ページ32)

今日:15 hit、昨日:0 hit、合計:1,252 hit

ゼロ距離 2 ページ32

至｢はぁ、ただいま～。｣
シトロン｢おかえりダヨ～、イタル！｣
咲也｢お疲れ様です！｣
至｢はぁ、帰ってきたって感じするわ。ただいま。｣
臣｢飯、準備しますね。｣
至｢頼む。腹減って死にそう。｣

そんな会話をする奴らに目を向ける。
すると茅ヶ崎の肩や髪が少し濡れているのに気付いた。

左京｢茅ヶ崎、どうしたんだ？濡れてるぞ。｣
至｢いや、雨降ってきてて。車からなんでこれくらいで済んでるけど、結構強いんです。｣
左京｢雨か…｣

昼間は比較的天気が良かったので、まさか雨だとは思わなかった。
アイツは傘を持っていったのだろうか、夜遅くなると言っていたが大丈夫なのか…
そんなことを考え始めたら、居てもたってもいられなくなる。
Aもいい大人なのだからどうにかするだろうが、どこか抜けている彼女が心配である。

至｢…そういえば、帰りに監督さんに会いましたよ。｣
左京｢は？｣
至｢俺の会社の近くで。これから打ち上げだって言ってたな。22時くらいには終わると思うって。｣
左京｢……。｣
至｢…とりあえず、俺は着替えて飯にしよっと。｣

不敵に笑うその姿に、心が読まれている気がして落ち着かないが、正直助かる。
時計をちらりと見上げると20:30を過ぎたところだった。
簡単に身支度を済ませ、車のキーを取る。

左京｢少し出てくる。｣
東｢ふふ、行ってらっしゃい。｣
左京｢遅くなると思うから、皆大人しく寝ておけよ。｣
咲也｢はい。｣
臣｢気を付けて。｣
左京｢あぁ。｣

後ろで笑う気配を感じながら、玄関を出た。
車のエンジンをかけ、アイツがいるであろう場所への地図を脳内に広げる。
今出ては少し早いだろう。
それでも居てもたってもいられなくて、アクセルを踏んだ。
徐々に強まる雨が窓を叩く音が、どこか急かすようなリズムを刻む。
助手席に置いた傘が、カタカタと揺れる。
信号で止まった所で、どこにいるのかと彼女へメールを送る。
程なくしてきた返信には、店名ともうすぐ終わりますの文字。
最寄りで車をパーキングへ入れ、もう一度メールを入れる。
その店から少し駅の方へ着いたところで、彼女の姿を探す。
返事はないが、電車で来ているのだからこの道を通るはずだ。
雨で視界が霞み、傘を差しながら歩く人の中から、彼女を見つけるのは困難かもしれないが、何故か見つけられる自信があった。