満開な花を君に。2 (ページ27)

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HUGのチカラ(茅ヶ崎至夢、ﾊﾞｸｽﾃﾊﾟﾛなお話) ページ27

※注意※若干バクステネタバレあり※

残業続きの毎日。
４月に新人が入ってきたり、人事異動があったり…
その波が六月になるというのに、今だ荒れ模様。
そう年齢も変わらないはずの新人が、やたら子どもに見えてしまって本当に溜め息しか出ない。
今日も終わりの見えない仕事を粗方片付けて、車に乗り込み、家へと帰った。
寮の電気は全て消えている。
そりゃ当たり前、今深夜1時過ぎ、就寝時間はとっくに過ぎている。
なるべく静かに玄関を入って、廊下を歩く。
忙しくて夕飯もまともに食べていないが、へとへとすぎて何かを作る気にもならない。
また深い溜め息が出た。
その時、ふと談話室から小さな光が漏れていることに気づく。
こんな時間に誰か起きているのか、それとも電気の消し忘れか…
談話室の扉を開けると、暗がりの中パソコンとにらめっこしている監督さん。

至｢…監督さん。｣
『あ、至さん！おかえりなさい！』

パッと振り返り、優しく笑う。
この笑顔を見ると、帰ってきたな、と安心する。
ここ最近深夜までの残業が続いているが、毎日これがあるから頑張れるというくらいには、今の俺の癒しである。

至｢うん、ただいま。｣
『お仕事、大変なんですね…お疲れ様です。』
至｢うん、大変…。だから、監督さん。｣
『はい？』
至｢ちょっと癒して。｣

立ち上がって俺の前にやってきた彼女を、正面から抱き締める。
柔らかい生地のパジャマと、風呂上がりの彼女の匂い。
首筋に顔を埋めて、ふぅと息を吐くと少し気持ちが和らいだ。
…ぁ、もちろん付き合ってはない、今のところは。
驚きすぎてか、緊張してか、黙って、腕の中でじっとしている。
それでも俺を突き飛ばしたり、罵ったりしない監督さんは、本当に優しいと思う。
まぁ、他のやつにもしてたら嫌だけど。

至｢…ただいま。｣
『ふふ、さっきも聞きましたよ？』
至｢でももう一回。｣
『…おかえりなさい、至さん。』

今この時間は俺だけの特別。
二人きりの大切な時間。
暫くそのまましていると、はっと彼女が顔をあげる。

『至さん、お腹すいてませんか？夜食にミネストローネ作ってあるんですけど…早く寝たいですか？』
至｢ん、食べる。｣
『じゃぁ準備してお部屋まで持っていくので、着替えてお風呂入ってきてください。』
至｢風呂、入んなきゃダメ？｣
『ダメです。ほら！』