Driving 3 ページ3
十座「ほら、見えたぞ。」
『う、わぁぁ！！凄い凄い！！キラキラだぁ！！』
大興奮な様子で、大声で話す。
ちらりと後ろを見ると、海に釘付けになった輝く瞳と、嬉しそうに笑う監督がいた。
その姿に、俺も安心してグリップを握り直した。
少しスピードを上げて、臣さんと太一に並ぶ。
臣「そろそろ停めるか！｣
十座「っす。｣
太一「やったー！海だ海〜！｣
近くの駐車場にバイクを停める。
監督がヘルメットを取ると、長い髪がさらりと落ちる。
ヘルメットを受け取り、４人で歩いて砂浜へと足を踏み入れた。
『すごーい！きれーい！』
太一「靴脱いじゃお！｣
『私も！』
臣「おいおい、あんまりはしゃいで転ぶなよ。」
はしゃぐ二人を、後ろから眺める。
太一はいつも通りだが、監督があんな風にしているのは初めて見た気がする。
俺たちの稽古や寮での仕事、他の劇団の手伝いとかをしてて、いつも忙しそうだ。
だから、喜んでる姿を見て俺も何だか嬉しかった。
臣「…監督、嬉しそうだな。」
十座「そうっすね。…連れてこれて良かった。」
俺がそう言うと、臣さんは少し目を見開いたあと、優しく目を細めて微笑んだ。
臣「そうだな。…でも、十座がそんな風に言うの、珍しいな。」
十座「…監督には感謝してもしきれねぇ。今日、こんなに喜んでもらえたなら、これくらいのことでこんなに笑ってくれるなら、また連れてきてやりたい。…と思う。」
臣「ははっ、そうだな。今度は十座から誘ってやったらどうだ？監督も喜ぶと思うぞ。」
十座「っす。｣
あんなに下手だったオーディションでの芝居でも、監督は俺を受け入れてくれた。
色んな芝居を教えてくれた。
芝居だけじゃない、仲間…家族の意味を教えてくれた。
柄にもなく、楽しいと思う毎日を送れているのは、彼女のお陰だ。
だから、出来ればいつも笑っててほしいと思う。
俺が笑わせられるなら、それが一番いい。
太一「おーい、臣くーん！十座さーん！早く早く！｣
『海、とっても綺麗だよー！水も冷たくて気持ちいいー！早くおいでー！』
臣「あぁ。…行こう、十座。」
十座「うす。｣
呼ばれるがままに歩き出す。
臣さんは首に下げたカメラで、沢山写真を撮っていた。
俺は、はしゃぐ二人に手を引かれ、結局海に足を入れることになった。
俺たちは、時間も忘れ、日が傾くまで、いつもの自分を脱ぎ捨てていた―――
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作者名：宇宙 | 作成日時：2018年6月29日 11時
