ただ愛する仲 Ⅴ【Hikaru.I】 (ページ9)

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朝、目が覚めると隣はもぬけの殻。
冷たくなっていたから早く起きたんだろう。

部屋を探しても彼は居ない。

『…病院、？』

すぐに病院に行って妹さんに声を掛けたけど
来ていないようで。

それよりも手術が出来なくなった、と聞いた。

そのまま泣いてしまった彼女と抱き合って、
1つ思い当たる場所に行くことにした。

　

『…何で私を捨てて1人で帰ったの』

照「ごめん、用あったんだよ」

いつもの屋上のソファーに座っていた照の横に行く。
少し隙間を空けてくれたから腰掛けた。

『…前にここから下にいる私のこと盗み見たでしょ！
　その時から好きだったの？』

照「やっぱ見えてたのかよ、でもそれはちげぇな。
　そもそも酒に酔ってお前のほうが先に、」

その時と同じように私からキスをすると、
ぴたりと動かなくなった。

『私からキスしたよね』

照「…え、」

『お酒飲んだ日の事思い出したの、
　まず…片思いだと思ってたし。』

照「馬鹿だな。
　好きでもねぇ女に一晩中肩なんて貸すかよ」

その肩に頭を乗せると優しく撫でてくれる。

照「お前ってほんと、見るたび綺麗になってくのな。」

『ずっと見ててくれたら
　もっと綺麗になるんだからね』

それは難しい、とでも言うように目を逸らすから
慌てて話題を変えた。

『ねぇ、質問してもいい？』

照「なんだよ」

『私は忘れてたけど、貴方は私を覚えてた。
　 …何で捜さなかったの？
　遠回りしないで長く一緒にいられたのに。』

元々いつかは聞こうと思っていた。
私が逆の立場だったら、その後が気になる。

照「…真っ暗で、美人だって気づかなかったわ」

『っふふ、なにそれ。』

照「はぁ、…まじで好きなんだって。
　言いたいことだけ言って生きても時間足んねぇ」

『苦しませてばっかなのにそれでも好き？』

照「当たり前じゃん、」

明らかに顔色が悪い彼を見ると涙が溢れる。
いつ、最期を迎えるのか、考えたくはないけれど。

『なんでよ…』

照「愛するのに理由がいるかよ、…ありがとな」

ハグをして、私の肩に顎を乗せる。

『事故の時から、私は好きだったのかな？
　 …ねぇ聞いてる？…っ照？』

腕の中で気を失う彼の頬は濡れていた。

生きていれば、別れにも慣れるという。

そんなのは嘘だ。
別れに慣れる人なんてどこにもいない。

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