ただ愛する仲 Ⅳ【Hikaru.I】 (ページ40)

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辰哉 side

辰「何であいつをよこした？」

麗「貴方がブレないようによ。
　だから彼を現場に置いたんでしょう？」

辰「はぁ？」

麗「Aさんと岩本くん。
　 2人を通して自分に警告してたのね。」

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照「俺をここに送った理由…自分で分かってんのか？」

・

彼の言葉が木霊する。

辰「…何が分かんだよ」

麗「貴方が担当しているB区域の設計図が
　 13年前と同じだって私が知らないとでも？
　 …設計上のミスじゃなかった。」

…建築は、設計が全てではない。

辰「現場で妥協した父さんの責任だって？」

麗「そうじゃないでしょう。
　すべきことから逃げないで、怯んだら負けよ。」

・
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・

Aちゃんのアトリエ行くと、
そこに彼女は居なかった。

蓮「あぁ、Aちゃんすか？」

辰「いや…慰霊公園パンフレットの
　サンプルは出来上がったかな〜って。」

蓮「これっすね」

ぱらぱらとその場で冊子を捲る。

蓮「…Aちゃんの退職、知ってました？
　この案件が終わったら辞めるって言ってて。
　このまま働いてもらえば…」

辰「辞めるのには理由があるはずだよ？」

冊子に⭕という付箋を貼って、彼女の机に置く。
目に付いたのは…図面。

蓮「あぁ、これっすか？
　事故のあったビルの図面っすよ
　なんか、設計士が亡くなったとか……」

…そんなの知ってるよ、父さんだもん。

辰「Aちゃんが“無責任な設計士”だって、ね」

蓮「いや…そうは言ってなかったですけど…」

謝罪だけを残して死を選ぶなんて無責任じゃ、
というその言葉には続きがあったようだ。

・

蓮「怖くない？亡くなった設計士の幽霊とか…」

『構造の計算も完璧で、設計に不備はない。』

蓮「じゃあ何で自分で？」

『そうだよね…、家族が可哀想。
　自分の責任じゃないなら、
　生きて真実を明かすべきだったのに。』

蓮「そうだよなぁ…」

『悔しさを証明するには死ぬしかないなんて
　本当に酷い世界だよ。』

・

俺のもやもやが少し解消された気がする。

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