ただ愛する仲 Ⅱ【Hikaru.I】 (ページ43)

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朝、現場の方の事務所に行くと、
岩本さんの姿は無かった。

『今日は岩本さん、午後までじゃ…』

「知らないよ〜？昨日いきなり出ていったきり！」

『そうですか…あ、差し入れのアイスです』

この前、慰霊碑を考えていた時こんな事を呟いた。

「死んだ人だけが犠牲者か？
　生き残った人の不幸は、どう償う？」

やはり、心に刺さることを言うなぁと
残された彼の上着を片手に思った。

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建設現場にやってきたおばあさん。

どうやら中に入りたいようだけれど、
門前払いされていた。

開けて、と叫んでいたけど次第に元気が無くなっていく。

『だ、大丈夫ですか！？私に捕まって…』

バス停の椅子まで連れていき、水を渡す。

「あぁ、ありがとう…はい水代よ」

『いやいや！とんでもない！』

「世話になったわ。
　二度と会えないからこそ、利子まで払わなくちゃ
　ごちそうさま。」

立ち上がり、歩き始めるのを見守っていると
道端でうずくまり始めた。

『ちょ、おばあちゃん！？』

結局、病院まで連れていくことに。
大介も居たあの病院。

「また世話になったわね、もう帰りなさい？」

『ご家族が来られたら…』

「1人で平気だから帰って？」

『そうですか…？
　一緒に居ると申し訳なく思うから
　 “帰れ”って言うくせに、いざ帰ると寂しい。』

私はそうでしたけどね、と付け足すと
目を合わせてくれなくなった。

…図星のようだ。

『ふふ、食べたいものないですか？
　利子も頂きますから、遠慮なく』

「…桃の缶詰」

『缶詰？』

「冷たくて甘いから、食欲のない時には最高よ
　はぁ、ひどく眠いわ…連絡先残していって？」

そうして眠りについたおばあさん。
私は桃の缶詰を手に入れることを目標に動き出した。

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