ただ愛する仲 Ⅱ【Hikaru.I】 (ページ28)

今日:50 hit、昨日:8 hit、合計:154,897 hit

075 ページ28

ー

16階からいつもの階段を降りる。

誰も通らないであろうから座って、
履き慣れないパンプスを脱ぐ。

後ろに足が見えたから、荷物を退かしてやる。

照「俺だよ」

『…本物だった、見間違いかと思った』

照「道塞いで何してんの？」

『ただ…休憩してるだけ』

照「ふーん、叱られて落ち込んでんのか」

どうやらこの人は見ていたらしい。
彼は私の隣に腰掛けた。

『はぁ…もう、よりによってあんな…』

照「あれくらいで落ち込むなんて馬鹿みたいだな」

『“みたい”じゃなくて元々馬鹿なの…
　みんな私より凄い』

どんどん考えれば考えるほど自己嫌悪に陥る。

照「…隣の芝生は青く見えるけど、みんな同じ。
　裏では苦労してるはず、…だ。」

『ん？ひょっとして慰めてる？』

照「…、安い慰めに感動したのか、泣くなよ？」

目が合うと、一瞬で逸らされて階段を下りてしまう。

『っ…前もここで会ったよね！？』

照「さあな」

『エレベーターは！？』

照「乗らない」

『…ところでなんでここに来たの？』

照「やたら気にするな、やっぱ俺に惚れた？」

そう言って下る足は止めてくれない。

『ちょっとまってよ！』

照「分かった、分かったから…もう家で飲もう」

・
・
・

『ねぇ、ここに住んでるの？』

照「…なんて顔してんだよ、失礼だな」

『家で飲もうって言ったのに、宿に連れてくるから…』

わざとふてくされた顔をする。

照「…何を期待してんの？
　勝手に着いてきたのはお前だろ？」

『偶然会ったついで！あと…友達が仲良くなれって…』

ー